介護の現場にはボランティアが不可欠 しかし‥‥

 介護の現場では多くのボランティアが活動しています。「ボランティアの皆さんにはとても感謝しています」「ボランティアの力なくして運営は成り立ちません」と施設長や管理者が語るのを多くの取材の場で見て来ました。
 当のボランティアにとっても、雰囲気の悪い事業所などでは活動したくないでしょうから、ボランティアが大勢来てくれるかどうかは、その事業所が多くの人たちに好かれ、地域に受け入れられているかを示すバロメーターともいえます。

予定のレクを途中で切り上げ

しかし、あまりボランティアに依存するのも考えものです。コロナ以前ですが、こんなケースがありました。

 ある有料老人ホームには、月に2回フルートの演奏に来てくれる主婦ボランティアがいました。とても愛想が良い人で、約束の演奏時間の30分を過ぎても時間の許す限り入居者と談話をしていることも多く、入居者からも「あの人が来るのが楽しみ」という声が沢山出ていました。

 ですが、ある日はいつもと様子が違いました。彼女は明らかに不機嫌で入居者との会話も殆どありません。そして、まだ30分になっていないのに演奏を止めてしまいました。帰り支度をしている彼女を、施設長が「○○さん、今日はどうしたのですか。30分は演奏してもらわないと…」と咎めたところ、「私は1円のお金ももらっていません。善意でここに来ています。『30分演奏する義務』もありません」と反論されてしまいました。その後、彼女は二度とホームに来ることはありませんでした。

 後日、彼女と繋がりがある人から聞いたところによると、「あのとき彼女は家庭で大きなトラブルがあって、ボランティアに集中できる状況ではなかった」とのことでした。

プロならば契約は絶対

 さて、彼女がプロだったら、こうした事態は発生したでしょうか。プロであればきちんと契約を交わし、対価が発生しますから、例え家庭の問題などの個人的事情があったとしても「月に2回・30分演奏」の契約は絶対に履行しようという意識がはたらきます。また、どうしても無理な場合には、契約相手に事情をきちんと説明し、事前に休止の要望や代替日の提案などを行います。場合によっては、自分と同じようなスキル持った人を紹介し、臨時で代わってもらうなどの対応をすることあります。

ボランティアに比べてこうしたリスクはずっと少ないでしょう。

 もちろん殆どのボランティアは責任感を持って活動しています。しかし、無償である以上プロに比べて対応できる範囲に限界はありますし、依頼主もプロ同様の対応を求めるのは難しいのが現実です。

「都合で今日は行けなくなりました」
「そうですか。残念です」

 ボランティアとこうしたやり取りをしているケースも多いのではないでしょうか。
 ボランティアにしてもらう予定だったレクが急遽中止になれば、その分スタッフが臨時に何かをしなくてはなりません。前もって準備をしていなければ、体操動画を流すなど、手っ取り早くできるいつものコンテンツになってしまいます。

これでは入居者の満足度も低下してしまうでしょう。

 介護の現場でボランティアの力を活用すること自体は悪いことではありません。しかし、プロと同水準の継続性や確実性が担保されているわけではありません。
「やろうと思えば現在のスタッフでもできる業務ではあるが、時間がかかるためについつい後回しになってしまっている」といった業務に対して必要に応じてボランティアを活用する、という形が理想なのではないでしょうか。「ボランティアが常にいることを前提にして運営を考える」ことは、万一の際のリスクが大きいと言わざるを得ないのが現実です。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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