国内企業の半数「社員の兼業・副業容認」 急速に変化する日本人の働き方
サラリーマンをしながら会社経営
伊藤忠商事、丸紅、富士通、新生銀行、日産自動車、コニカミノルタ、ユニ・チャーム、ソフトバンク、ヤフー、ディー・エヌ・エー、メルカリ、サイバーエージェント・・・・
いずれも日本を代表する一流・有名企業ですが、大学生の就職希望企業ランキングではありません。「現在、兼業・副業を認めている企業」の一部です(出典:BitWork)。
人材サービス大手のマイナビが2020年8月に全国1910社を対象に実施した調査では、49.6%の企業が「従業員の兼業・副業を認めている」と回答しています。また、「将来認める予定」も含めると57.0%に達します。
この様に、近年、一つの会社に縛られるのではなく、同時に複数の会社の雇用にされたり、雇用される立場であると同時に会社を経営して人を雇用する立場になったり、などの新しい働き方が急速に広まっています。
勤務時間についても「正規雇用だが1日4時間・週3日勤務」など、従来とは異なるスタイルを認める企業が増えています。また、働く場所についても同様です。
今は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、自宅などで働くテレワークが広がっていますが、それ以前より業務上の報・連・相は全てメールやWeb会議などで行い、オフィスへの出社は一切不要というスタイルの会社もIT業界などでは珍しくありませんでした。
副業・兼業は人材育成に効果
以前は、日本の企業の大半は「兼業・副業禁止」でした。例えば、1990年頃には現職の男性会社員2人による音楽ユニットが活動していました。2人ともそれぞれ日本を代表する有名企業に勤務していましたが、1人は勤務先から「芸能活動禁止」を言い渡されたことで、転職を余儀なくされています。
また、今から20年ほど前には、ロバート・キヨサキ氏の著作「金持ち父さん貧乏父さん」に影響を受け、日本の若いサラリーマンの間でアパート・マンション投資がちょっとしたブームになったことがありました。
彼らの中にはひと財産を築いて本を書いたり、メディアの取材を受けたり、講演活動をしたりする人もいましたが、多くが「勤務先にばれたら困る」との理由から、勤務先は秘密にし、本人は偽名での登場でした。
日本の企業が兼業・副業を禁止してきた理由としては「本業に身が入らなくなる」「自社の情報やノウハウなどが外部に流出するリスクがある」「兼業・副業先に転職されてしまう可能性がある」などが主ですが、「会社のイメージが悪くなる」というものもありました。会社勤めをしているのに、他でも働いているのは「金に困っているから」であり、その原因としては「給料が安い」か「ギャンブルなどで多額の借金を抱えている」と想像されたからです。
では、なぜここにきて、企業は急には兼業・副業を認めるようになっているのでしょうか。先に紹介したマイナビの調査では「社員の収入の補填」がトップ。
以下「社員のモチベーションアップ」「社員のスキルアップ」「優秀な人材の確保」と続きます。
トップの「社員の収入の補填」はともかく、それ以外の理由は「副業・兼業は社員の新たな知識・技能・人脈醸成の機会になり、一つの会社だけに勤務するよりも優秀な人材を育成できる」と企業側が考えている、ということになります。
ネット普及で副業・兼業・起業が身近に
また、「社会全体が副業・兼業を行いやすい環境になっている」という点もあります。
例えば、これまではサラリーマンが副業・兼業をしようと思ったら、勤務修了後や休日にアルバイトをする程度しか選択肢がありませんでした。時間もかなり割かれますし、体力的な問題もありますので、誰もが気軽にできるという環境ではなかったのが現実です。しかし、今は、ブログ、YouTubeなど、インターネットを使って好きな時間に収入を得ることが可能になりました。また、何か事業資金が必要になった場合には、金融機関からの融資に頼らなくとも、クラウドファンディングなどを利用して、直接市場から資金を調達することが可能になっています。
また、これらは副業・兼業だけではなく、起業に関しても同様と言えます。今は「一億総副業・兼業時代」「誰でも起業できる時代」と言っても過言ではないのです。
しかし、こうした活動を行う場合に問題になるのが「場所」です。まさか本業をしている会社のデスクで副業・兼業、起業準備をするわけにはいきません。では、どこを活動拠点とするのが効率的なのでしょうか。次回のコラムでは、その点を検証していきます。
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