失敗しない老人ホームの選び方~重要事項説明書から職員の質を見抜く~
最近増加している有料老人ホームでの虐待
有料老人ホームの職員による入居者への虐待のニュースが良く取り上げられます。
特に大きな話題となったのが、2014年11月に起きた神奈川の某ホームでの転落死事件。ホーム職員が認知症の高齢者の身体を転落させた事件です。
介護施設での虐待判断件数は平成26年度で約300件。
年々増加しています。
何故増加するのか。
原則的に業界の慢性的な人手不足がベースになっていると考えられますが、それに加え認知症ケアの難しさ(入居者からの暴言や暴力)、ホーム職員の経験不足(認知症への理解が十分でなかったり、根本的な常識に欠ける部分があり、本来雇わない人材を人手不足で雇ってしまう等)等が原因として挙げられます。
虐待の多寡は、ホーム料金の高低に比例するものではありません。価格が高いホームだからと言って、一概に虐待が少ないとは言えないのが現状。
虐待の起こりにくいホームとして考えられるのが、以下の5点。
①ホーム長が明るくリーダーシップを発揮している
②職員の表情が明るく、笑顔が多い
③従業員の経験年数が長く、離職率が低い
④ホームの看取り能力が高い
⑤地域住民にホームが開放されていたり、運営懇談会定期的に開催され、家族の出席率が高い
①、②、⑤はホーム見学時に質問したり、様子を見ないとわかりませんが、③、④は「重要事項説明書」に記載されています。
以下、「重要事項説明書」での従業員の経験年数、離職率、看取り能力についてどうやって見ていくのかを説明しましょう。
有料老人ホーム職員の質を重要事項説明書から読み解く
上記は大阪府豊中市のある介護付有料老人ホームの重要事項説明書を抜粋したものです。
赤丸で囲んでいるのがその施設の直接処遇職員数。このホームだと介護職員と看護職員をあわせ37名です。
青丸で囲んでいるのがその施設の前年の離職者と採用者数。このホームだと前年13名が退職し、13名が採用されています。
ですので、このホームの前年の理縮率は13名/37名で35%。
ただ、このホームは、大手が運営しているホームで転勤等で離職する場合もカウントされています。実際の離職率が35%かどうかは定かではありませんが、概ね35%程度であることは確かです。
公益財団法人介護労働安定センター平成30年度「介護労働実態調査」の結果によると、介護職(訪問介護員・介護職員)の実際の離職率は平成30年は15.4%。
この数字から考えると、上記施設は離職率が高いと言えるでしょう。
また、同施設は直接処遇職員のうち、経験3年未満の職員が20名。全体の54%。
比較的ベテラン職員が多いホームと言えます。
介護福祉士の資格を有する職員が16名。介護職員の57%を占めています。
介護に対する志が比較的高い職員が多いと言えるのではないでしょうか。
看取り力の確認方法は!!
では、このホームの看取り力は高いのか。
まず職員体制で24時間看護師常駐が確認されるので、医療対応力は高いと言えます。
また、前年度の退去者の状況を見ると「死亡退去」が9名。
ほぼ毎月、看取っていると言えますので、看取り力の高いホームと言えるでしょう。
このように、「重要事項説明書」を紐解けば、そのホームの職員力がある程度見えてきます。
見学や体験入居をしないとわからない場合も多い
重要事項説明書だけでそのホームの職員の質がわかるのか?と言うと、当然そうではないです。
ホームに見学に行き、体験に入居しないと見えないポイントは多数あります。
見学や体験入居時にチェックすべき従業員の状況やホームの雰囲気について下記に記載しておきます。
①ホーム長のやる気とリーターシップ
②職員の表情が明るく、笑顔が多いか
③認知症に対するスキルの高い職員が多いか
④生活相談員は明るく入居者の話に耳を傾けてくれるか
⑤レクリエーションの実施の頻度
⑥ホーム全体が居心地の良い雰囲気が出ているか
①~⑤は見学時に質問して頂ければ答えが返ってきます。
⑥については、見学や体験入居を行った方の感覚です。
「居心地」は、自身に合うかどうかの大切な観点。じっくり見学して雰囲気を感じてみて下さい。