高齢者の病気・疾患

シニアのためのメディカル・コラム: 病気としての「骨粗鬆症」について 2話

骨がもろくなる!? 骨粗鬆症2

「医師×福祉×経営」で感じたことを発信します、レギュラーコラムニストの柏木です。
今回は前回に続いて、骨粗鬆症の診断について述べていきます。

骨密度って聞いたことありますか?

みなさんは骨密度(こつみつど)という言葉を聞いたことがありますか?
骨のもろさ、頑丈さの目安になる指標です。
最もよくある検査方法は、腰や太ももの付け根である大腿骨近位部の骨をレントゲンで撮影し、その骨の密度を測る方法です。
施設によっては超音波を使用するところもあります。

骨密度の検査は、年齢と性別によって基準値が異なります。
なので、万人に共通する基準値があるわけではありません。
これは考えてみれば当然で、骨がもろくて当然の70歳女性の方と、通常は骨がもろくない40歳男性と比較すると、「骨密度が低下している」と判断する基準が異なるわけです。

実際の診断

実際に骨粗鬆症を診断する際には、骨密度だけでなく、問診やこれまでのご病気などもふくめて総合的に判断します。
その中で、世界的に使われているツールとして、FRAX([https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?lang=jp])というものがあります。
これは、将来骨折するリスクを計算するツールです。
総合的な判断で、薬の必要性やアドバイスを検討するものです。

どういう人が骨粗鬆症の検査するべき?

さて、骨密度という検査について、詳しく述べてきました。
ただ、検査というのは誰でも彼でもすれば良いというものではありません。
お金がかかることや、骨密度の測定ならレントゲンの被爆などが生じます。
 
また、どの検査も完璧ではないので、一定の確率で「本当は骨粗鬆症でないのに、骨粗鬆症であるという結果」が生じます。
その場合、必要のない薬を年単位で内服することになります。
そういった必要がない薬で、重篤な副作用が生じてしまったら、目も当てられないですよね。
医師の役割は、検査を無目的に進めるのではなく、検査の良い点はもちろん限界も理解した上で、検査が必要かどうかを判断することです。

では、どのような方が検査を検討すべきなのでしょうか?
日本の骨粗鬆症のガイドラインでは、以下のような方の骨密度の検査の有効性が示されています。

・65歳以上の女性
・危険因子を有する65歳未満の閉経後、まもなく閉経しそうな女性
・70歳以上の男性
・危険因子を有する50歳以上70歳未満の男性


ここでいう「危険因子」とは、過度のアルコール摂取(1日3単位*以上)がある方、喫煙をしている方、家族に大腿骨近位部骨折(近位部骨折:足の付根に近い所の骨折)の経験者がいるといったことを意味しています。
また、これらは骨がもろくなる病気や薬のない方や、骨がもろくなったせいで起こった骨折を経験してない方を対象にしています。

骨がもろくなる病気のある方などは、上記にかかわらず個別の判断が必要です。
かかりつけのある読者の方は、担当の先生が上記のような基準を参考に、骨密度の測定が必要かどうか考えてくれていると思います。
なので、心配はいらないと思うのですが、ご自身の健康状態を把握しておくのも大切なので、機会があれば骨粗鬆症の心配がどの程度あるかなど、尋ねてみても良いかもしれませんね。
 
*アルコール摂取をする上での「酒の1単位」とは
アルコール摂取量の基準とされるお酒の1単位とは、純アルコールに換算して20gです。
この1単位を各種アルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、焼酎0.6合(110ml)が目安となります。
出典:アルコール健康医学協会HP 「お酒の1単位」より

まとめ

今回は骨粗鬆症の診断について述べてきました。
次回は骨粗鬆症の治療について、薬を中心にお話します。

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