相続・終活の事前準備

遺言書を残そう/自分で書く遺言書の新しいかたち

近ごろ、老いを感じるようになってきた。
元気なうちに遺言書を書いてみよう、とペンを持つ。

やみくもに書こうとしても、何から書いてよいかわかりません。
そもそも、法定相続人が「妻一人」だったとすれば遺言書を残す必要はなく、手紙でよいのです。

しかし、全財産を特定の一人に相続させたい場合や、家は妻に、店は長男に、駐車場の土地は娘になどと遺産分割を指定する場合には、法的に有効な遺言書を作成する必要があります。
相続財産にはプラスの財産と、マイナスの財産があり、「父の借金だけ相続してしまった」ということにならないためにも、あらかじめ財産を整理し、一覧に記す財産目録の作成は必要不可欠になるでしょう。

40年ぶりの大改正で利便性向上、自筆証書遺言の新しい方式

平成30年7月に、民法相続法が40年ぶりの大改正となりました。(平成31年1月13日施行)

これまでは全文自書でしたので、〇〇銀行△△口座にいくら、不動産の所在地はどこ、株式、負債等々、誤字があれば書き直し、変更があればまた書き直す。
遺言書は、新しい日付の遺言が有効となり、古い日付の遺言は撤回されたものとみなされますので、何度でも書き直すことができます。しかし、元気なうちはよいのですが、お年寄りや病院のベッドで寝たきりになってしまえば、全文手書きはとても大きな負担となってしまいます。

改正法では、この自分で書く遺言書の制度(自筆証書遺言制度)が緩和され、パソコンで作成した財産目録や通帳のコピー、不動産の登記事項証明書等を、自筆証書に添付することが可能になりました。
添付した財産目録には偽造防止のため、全ページに署名・押印が必要ですが、書いては書き直す負担が格段に軽減され、今後、自筆証書遺言の作成増加が見込まれると考えられています。

法務局の保管制度の創設

自筆証書遺言は、通常自宅で大切に保管されます。仏壇や金庫、大切に保管されて、家族に見つけてもらえなかったり、捨てられてしまったり、偽造される恐れもあります。せっかく作成したのですから、安全に保管し、見つけてもらいたいものです。

改正法では、遺言書を利用しやすく、紛失や隠匿防止にもつながるなどとして、法務局で保管する制度が創設されました。
この保管制度を利用すると、法務局で遺言者の本人確認や、遺言書の方式に不備がないか等チェックされるため、有効な遺言書を、紛失、偽造、変造の恐れなく保管することができます。

保管方法は、遺言書を画像データ化し、法務局のデータベースに登録され、相続開始後は全国どの法務局へも、遺言書の交付申請をすることが可能です。相続人や遺言執行人等の一人が交付を求めると、法務局からその他の相続人へ遺言書の存在が通知される仕組みになっています。

また、これまでネックとされてきた家庭裁判所での検認が不要になります。検認とは、家庭裁判所において、相続人立会いのもと遺言書を開封し、後日偽造や変造ができないように内容を明確にする手続きです。この手続きが終わるまでに数か月を要することもあり、その間は遺言者の預金が引き出せず、相続人の生活に支障をきたすこともありましたが、検認が不要になり、いち早く相続手続に取り掛かることができるようになりました。
法務局での保管制度は、平成32年7月までに開始されます。

公正証書遺言と自筆証書遺言の比較

公正証書遺言は、公証人に内容を告げ、それに基づいて公証人が遺言書を作成します。専門家が作成しますので方式不備による無効の心配がなく、原本は公正役場で保管されるため、紛失や改ざんの恐れもありません。
また、専門の士業に相談すれば、遺言書の内容が最善であるか、もめ事の原因を作っていないかなど、複雑な相続であっても専門家の助言に基づいた法的に有効な遺言書を作成できます。

自筆証書遺言は、法務局での方式チェックはありますが、内容にまで審査が及びません。あくまでも、自分で作る遺言書。費用がかからず、いつでも作成できるメリットはありますが、遺言の内容は自己で慎重に判断する必要があります。

遺言書を残そう/まとめ

相続とは、資産の有無にかかわらず必ず発生するものです。亡くなった方の名義のまま放置していたら、おじさんおばさん、めいやおいまで相続人になっていた、というケースは現実にあることです。
「資産が少ないから遺言書なんて」と思っていても、遺言書がないことで相続手続に時間や労力を要したり、親族間に争いが生じたり、大変な目にあわれた方をたくさんみてきました。

改正法により、格段に利便性が向上した自筆証書遺言制度。
相続が始まるころに自分はいない。自分がいないから相続が始まる。大切なご家族のために感謝の一筆を添えて、遺言書の作成をおすすめいたします。

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