財産管理のいろいろ①(知っておきたい財産管理委任契約の基礎知識)
転ばぬ先の杖として、段階に応じた対策を
年齢を重ねると、身体の不自由や判断能力の低下などにより、これまで自分で行ってこられた日常生活の手続きにも支障が出てくる場合があります。
そこで必要になるのが、信頼できる誰かのサポート。
元気なうちから、もしもの場合を想定して、第三者を代理人や後見人に選任できる制度を利用し、将来の不安に備えましょう。
これから3話にわたって、「財産管理のいろいろ」についてご説明します。
まず、初回は「財産管理委任契約の基礎知識」についてご紹介します。
こんな方には「財産管理委任契約」が必要です。
身体が弱って歩くのも困難になったり、病気の治療や手術のために長期間入院しているなどの理由で、下記のような生活上の支障が生じる場合には、誰かのサポートが必要です。
通常、このような場合は本人が「委任状」を書いて誰かに事務処理の代行を依頼します。
しかし、高齢により本人が寝たきりになったり、身体の不自由が生じている場合は、継続的なサポートが必要になるため、契約や手続きのたびに委任状を作るのは大変です。
そこで、このような本人の財産に関する手続き全般について、第三者を代理人に選び本人の代わりに手続きをしてもらう、という「財産管理委任契約書」を作成すれば、その都度、委任状を出す必要がなくなります。
身近に頼れる親族がいないケースや、ひとり暮らしの方などは、早いうちから信頼できる相手を選び、契約について検討しておくのがよいでしょう。
「財産管理契約」は私的な契約ですので、書式等に法的な決まりはありませんが、後々トラブルが起こらないよう、公正証書での作成・公証役場への申請等をすると安心です。
財産管理の代理人になれるのはどんな人?
財産管理委任契約は、当事者間の合意さえあれば成立し、内容や開始する時期も自由に決めることができます。
代理人になれる人は、親族・他人を問いません。身近な親族が受任者となる場合でも、契約書を作成しておくことにより、責任の所在を明確にしておくことにつながるでしょう。
私的な契約であるために、代理人としての務めをチェックする公的な監督人は存在しません。
そこで、財産管理の代理人になれる条件としては、信頼できる人であること、委任された事務処理を実施できる能力と時間があること、委任者の生活状況を把握できる立場であること、などが必要となります。
司法書士が財産管理の代理人に就任することもできますので、信頼できる代理人をお探しの場合は、ぜひお気軽にご相談下さい。
財産管理契約を結ぶメリットとは?
財産管理委任契約を結ぶことで、次のようなメリットがあります。
①手続きのたびに委任状を作らなくても、日常的な契約や事務手続きを継続して同一の代理人に行ってもらえます。
②金融機関などで、本人の代理人であることの証明が客観的にできます。
③親から子が代理人として任命された場合、他の親族に財産管理委任を受けていることを証明でき、気兼ねなく諸手続きができます。
④他人や、他の親族によって財産を使い込まれることを防止できます。
⑤金融機関の手続きだけを委任したりと、本人の希望する手続きを選んで代行してもらえる自由度の高さがあります。
身体が不自由な状態になっても、大切な財産をしっかりと守れるよう、元気なうちから検討しておくことが大切です。