失敗する遺言書 成功する遺言書
失敗した遺言書
相続のご相談で、遺言書を携えて来られることがあります。
そのなかには、失敗していることが遺言書も存在します。
更に言うと、遺言書として成立していないものもありました。
たとえば、次のようなものです。
① 押印がない
② 自筆証書遺言なのに、パソコンで打ち込んだもの
③ メモ程度に簡単に記載したもの
④ 遺言書に書いている内容が不明(判読できない、意味が通じない、など)
⑤ 内容に過不足がある
せっかく遺言書を作成したのに、「残念ながら遺言書として使えない」または内容に不備があっては不幸を招いてしまうこともあります。
実務上は、遺言書が有効になるように解釈が行われています。
しかし、内容が不明確な場合、そもそも遺言書として成立していない場合などは、遺言書(のようなメモ含む)があるだけに、かえって財産を引き継ぐ方々に苦労をかけることになりかねません。
最悪の場合、相続人の間で裁判所を通じて紛争となるケースもあります。
生前であれば、何らかのアドバイスができます。
しかし、遺言書は「亡くなってから」使うことになるため、遺言した方(以下「遺言者」といいます)に訂正を求めることができません。
遺言書は何のために作成するのか?
遺言書は、遺言者が亡くなった後に、残されたご家族などの大切な方が困らないように作成するものです。
つまり、遺言書を使って、ご自身の思いを死後に伝えるものです。
遺言書は、遺言者が亡くなってから効力が発生します(使えるようになります)。
そのため、不明瞭な内容であったり、誰が作成したものか分からないなどの疑いがあっては、作成者本人である遺言者が亡くなっているので確認しようがありません。
そこで、法律によって、遺言書の作成方法(方式)や遺言書でできることを厳格に定めています。
成功する遺言書を作成するために
遺言書は比較的安価で手軽に作成できます。
しかし、その反面、成功する遺言書の作成は非常に難しいと考えております。
成功する遺言書を作成するためには、弁護士や司法書士などの専門家にご相談されることをオススメします。
私は司法書士として、遺言書作成のお手伝いをすることがあります。
また作成された遺言書を使って、相続手続きのお手伝いをさせていただくこともあります。
そこで、もしご自身で作成してみたいとお考えの方へのアドバイスとして、少なくとも次のことは守ってください。
1.形式的な要件
まず、遺言書として成立させるためには、法律上、次の3つの方式があります。
(緊急用の方法もありますが、細かすぎるので、このコラムでは原則的な方法のみご紹介いたします)
① 公正証書遺言
② 自筆証書遺言
③ 秘密証書遺言
この3つのいずれかの方法で作成する必要があります。
作成する前には必ずご確認ください。
2.内容に関する要件
多くの読者の方は、弁護士や司法書士などの専門家ではないと思われますので、肩ひじを張らずに自由に書いていただければと思います(※ただし、遺言書として利用できる内容かどうかは別の問題です)。
しかし、自由に書いていただく上で、気を付けていただきたいことがあります。
それは、書いた内容が「一義的」であることと「分かりやすい」ということです。
つまり、誰が読んでも一つの解釈にしかならないように書くことです。
遺言書には、このように2つの要件を満たす必要があります。
専門家としてのオススメは、「①公正証書遺言」です。
その理由は、公証役場で原本が保管されるため、紛失・偽造などのおそれがなくなります。
公証人が関与しますので、方式違反により誤った遺言書らしきものを作ってしまうおそれはなくなります。
まとめ
遺言書は、残された大切な方へ思いを伝える以外にも、争族対策としても、有効な手段です。
特に、次のような方には、是非一度、遺言書の作成をご検討ください。
① お子様がいらっしゃらないご夫婦
② 自分の死後、親族間に争いが生じそうな予感がする
③ 残された家族に相続手続きで手間を取らせたくない
皆さまが、成功する遺言書を作成されることを願っております。