相続・終活の事前準備

相続税について

相続税の申告の特徴

相続税の申告は、相続開始の日(通常亡くなられた日)から10ヶ月以内が提出期限です。ただ、他の税目(法人税・所得税・消費税)と下記おいて異なります。

1.申告書の提出が一度きり
法人税・所得税・消費税の申告は毎年提出します。

2.申告書は共同で提出
税金の申告は個々人が別個に行うのが原則ですが、相続税は違います。計算の基礎となる、材料が、被相続人が保有していた財産であり、その財産を元に税額を計算しますので、実務的には相続人が連署して共同提出が原則です。
 
とはいえ、相続同士で遺産を巡って争いがあり、連署しての提出が難しい場合は、別々に申告書を提出することもあります。
大抵このような場合は、相続財産の相続税法上の評価額が相続人ごとに異なる可能性が極めて高いです。
 
少々の差では問題ないですが、乖離が大きい場合は、税務署が相続人の間に入って評価額の調整を行うことがあります。

3.税理士ごとに申告数値が異なる
どの税目に置いても税理士ごとに税法の解釈が違うので、同じ内容に対する申告数値は異なるのは当然なのですが、相続税においては特にその乖離が大きいです。
 
理由としましては
 (1) 財産の評価の基準となる財産評価基本通達が非常に広範囲であるので、すべての内容を把握しきれるものではない。税理士によっては相続税の申告を断るケースもある。
 
(2) 特に不動産の評価については正確にするなら、正確な測量が必要であるが、コスト面や技術面で正確な測量はできないのである程度の概算計算になる。
 
上記などが挙げられます。

相続税の税務調査の特徴

相続税の申告は、相続開始の日(通常亡くなられた日)から10ヶ月以内が提出期限です。
 
ただ、提出が終わった後でも、税務署から内容について問い合わせがあることが結構多く、場合によっては申告内容について税務署の調査が入ることがあります。
これを税務調査といいます
他の税目(法人税・所得税・消費税)などについても税務調査は入りますのが、下において、相続税の税務調査は異なります。

1.税務調査が一度切り

税務調査の結果申告誤りについては、内容を訂正した申告書(修正申告書といいます)を提出し追徴税額を支払うことになるのですが、法人税・所得税・消費税の税目の調査で多い修正内容が、通称期ズレと言われる、売上又は経費の計上時期の間違いです。
 
これらについては、修正して追徴税額を支払ったとしても、その次の年の申告でその払った分の税額が減額されるのでトータルの税負担は変わりません。
しかし、相続税の申告書の提出は一度きりなので、そのような税負担の調整はありません。
追徴税額=実損額となります。

2.一番詳しい人がいない

相続税の税務調査は、亡くなられた方(被相続人といいます。)の遺産が対象となっているのはありますが、被相続人自身が遺産を管理運用されていたケースが非常に多いです。
 
でも、税務調査の対応を行うのは、被相続人の配偶者やお子さん(相続人といいます)です。
中には亡くなられるまで、遺産のことを一切知らなかったというケースも多々あります。

3.トラブルが発生しがち

法人税・所得税・消費税の税務調査において、対応するのは普通に働かれている社長など、世間慣れしている方です。
一方相続税においては、例えば専業主婦で世間から離れている奥様が対応せざるを得ないことが多々あります。
税務署員に初めて会われる方も多く、その初めての機会が税務調査ということで、警察の取り調べと混同して、感情的になられる方もいらっしゃいます。
 
したがって税理士も税務署員も相続税の税務調査については丁寧に慎重に対応することになります。
 
経験した例では、
税務署員があまりにしつこく(彼らも仕事なのですが)遺産のことを聞くので、包丁をテーブルに突き立ててどうにでもしてくれとキレたケース
 
申告していない預金通帳を税務署員が発見したところ、その通帳をもって、ご自分の部屋に籠城されて数時間出てこなかったケース

などがあります。
 

4.裁判などに影響することがある

実際経験した話なのですが、相続人同士で、遺産の整理を巡って裁判沙汰になっている最中に税務調査が入りました。
 
相続税の申告は当然別々に提出することとなります。
がこのケースでは相続人で1名未提出の方がいらっしゃいました。
 
税務署としては出してもらわざるを得ないので、参考資料として、提出された方の資料を提示しました。
そこにはその未提出の方が把握してなかった財産が記載されており、それによって、裁判の争点が増えてしまったことがあります。

5.名義預金の問題

相続税の税務調査の対象となる遺産は被相続人のすべての遺産です。
遺産の中には不動産 銀行預金 株式 などがありますが、不動産や株式については、名義が被相続人のものを申告すれば大体間違いがないです。
経験上税務調査の8割以上の争点は預金の話でした。 
 
特に問題となるのは被相続人の配偶者(奥様)名義の預金です。
名義が奥様であっても、通帳の履歴を辿っていくと被相続人の口座からの資金移動が確認される場合は、奥様名義の預金であっても相続財産として認定されます。
例えば、生前生活費を毎月奥さん口座に振り込んでいてそれを使い切っていればいいのですが、貯まっていった預金(へそくり)については奥さんのものとはならず相続財産に該当します。
この部分は世間感覚と税法のズレがありますので、税務調査では非常に気を使う部分です。

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この記事を書いたコラムニスト

磯貝 慎一郎 (イソガイシンイチロウ)

税理士

平成14年3月に開業。
スピーディーなアドバイスとサービスをご提供します。
開業支援 金融機関対策 相続税対策 税務調査対策を得意としています。

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