老人ホーム選びの知識

失敗しない老人ホームの選び方~食事について~

老人ホーム選びにかかせない”食事”

有料老人ホーム等への「住み替え」を考える場合に、「食事」は重要視されるキーワードです。
 
以前、私が経営に携わっていた運営会社でも、ご入居者さまから、入居前に受けるご質問のNo. 1は食事でしたし、入居後のご苦情も食事に関することが多かったです。
 
毎日の暮らしで、楽しみなのは食事ですよね。おいしい食事は生活の基本で、心身が不自由になり行動が制限されてくると、今まで以上に食事が生活の楽しみになるとおっしゃるご入居者さまが増えてきます。
 
有料老人ホーム、特に入居一時金を数千万円も払って入居するホームを選択する基準として、食事への取り組みはホーム選びの重要な基準になります。
 
有料老人ホームの食事の提供方法にはさまざまなものがあり、それぞれのホームで色々なやり方が行われています。
 
・自社で調理人や管理栄養士を抱え、食事をつくるホーム
・クックチル*で完成品の冷凍保存された食材を仕入れ、最後の仕上げは自身の職員で行うホーム
・業者を入れて、ホーム内で材料を仕入れ、調理しているホーム
・材料仕入れは業者に任せているが、お米やパンといった主食の仕入れは自身で行うホーム
・付属の菜園等を持ち、そこで取れた野菜を食事に使うホーム
 
ホームによって食事への取り組み方は様々です。
 
でもどのホーム(特に高級有料老人ホームは)のパンフを見ても、見学に行っても、「うちのホームは食事にこだわっています。」「食事に力を入れてます。朝食、夕食は選択制で、毎週イベント食を導入してます。」「こだわりの食材を使っています。」と言われますよね。「うちの食事はあんまりおいしくないです。」なんて言うホームはありません。
 
*クックチル・・・「クックチルとは、加熱調理(芯温75℃/1分)した食品を急速冷却し(加熱後30分以内に冷却開始し、90分以内に芯温3℃に冷却)、喫食時間に合せて再加熱し提供する調理システム」エレクター社公式サイトより引用。

”食事”の良し悪しを見分けるためのヒント

そこで、食事に関し、良い老人ホームを選ぶヒントを3点紹介します。あくまで私見なので、これが正解というものではないのですが、一定の基準にはなると思います。
 
1.「食事委託業者は何社目か?」
 
自社で調理人・管理栄養士を雇い自ら食事を提供出来るのが一番良いのですが、中小規模のホームで中々そこまでするのは経営上も大変です。
 
ですから、食事委託業者に頼りがちですが、委託業者さんが何社目かを尋ねるのは重要なポイント。交代させた業者さんが多ければ多いほど、食事に関しては、良くないホームの可能性が高いです。
 
食事の良し悪しは、メニュー、食材も重要ですが、やはり「調理人」の腕次第というところもあります。食事に気を配っているホームは、ご入居者さまのご意見をよく聞き、通常から委託事業者とのコミュニーションを取り、委託業者を変える前に様々な試みを行います。たとえばご入居者さまの口に合わない調理人の場合は委託業者に交代を要求したり、味付けの変更を要求したりですとか、そういったやり取りをします。委託事業者側も折角の仕事ですから、真摯に向き合い協議に応じるものです。
 
それを、すぐに変えるホームは如何なものでしょうか?
 
基本、業者さんを替える毎に、食事の質は落ちていくものと考えて下さい。
 
1社の委託業者さんとの委託期間が長ければ長いほど、ホームと委託業者さんの間できちんと協議し、改善が行われているものです。
 
委託業者さんの調理人や管理栄養士の立場で考えると、「自分に給料を払ってくれる人は誰か?その人の言うことを優先しよう。」となるはずです。
 
ですから、ずっと1社の業者さんを長年使っているホームは、根気強く業者さん、調理人さん等と話し合い、工夫もたくさんしていると思われます。
 
2.「職員さんも食べていますか?」
 
職員さんが、率先してホームの食事を食べているかどうかも重要なポイントになります。職員さんに食べてもらうには、会社としては、かなり安く提供しなければなりません。毎日朝昼夕食べるわけですから、利用者さまと同じ値段では、薄給の職員さんは食べられないですよね。
 
ということは、ホーム自身が料金補填しなければなりません。そうでないと委託事業者が大変ですからね。
 
職員さんが毎日継続して食べ続けていると、職員側からも食事に関し色々な意見が出されます。
 
普段、利用者に寄り添う職員こそ、利用者さまの体調だけでなく、嗜好も理解しているわけですから、そういう意見を大切にするホームは食事に力を入れているホームと言えるでしょう。
 
口だけでなく、そこまでして本心から食事に力を入れようとしていることが大切です。
 
3.食事委員会はどれくらいの頻度で行われているか
 
「検食簿を見せてください」という質問を投げかけてみてもいいですね。中々言いにくい質問ですが、何千万も払う決断をする場合は勇気を出して聞いてみましょう。
 
「検食簿」を見ると、職員さんの毎日3食の食事に関する評価が記載されています。毎日毎食、きちんとびっしり記載されているかは重要なポイントです。「殿の毒見」ではないわけですから、あたりさわりのない文言が並んでいるだけのホームは、実質は食事を軽視していると見てよいでしょう。
 
また、「食事委員会はどれくらいの頻度で行われていますか?」というのも聞いてみては如何てしょうか?食事委員会の頻度が多ければ多いほど、「食事」に気を配っているホームと言えます。通常は1回/月ですが、多い所は毎週行っているところもあります。また、複数の店舗を運営しているホームでは、毎日の残食やご入居者さまの評価、職員の評価を定期的に集め、それを翌月のメニューに反映しているところもあります。
 
ホームによってやり方は様々ですが、とにかく「食事」に関する会議をどれだけ行っているかは重要な視点だと思います。

聞くのはタダ。後悔しないためにも。

以上、簡単に3つのポイントを記載しました。
 
この他にも、「地元の人の入居割合が高いので、調理人は出来るだけ地元出身者にしている」「委託事業者さんに、和食と洋食で違う調理人を用意してもらっている」「米やパン等の主食は、特別に農家と契約している」「選択食以外にアラカルトを用意している」等、色々な工夫をそれぞれのホームが行っています。
 
体験入居で試食を行えるホームが多いですが、体験入居では実際に過ごしてみた場合よりも結構おいしく感じるものです。
 
毎日3食を食べていくわけですから、勇気を出して聞いてみるべきポイントだと思います。
 

参考資料

エレクター社,「クックチルの導入からアフターフォローまでサポート」,エレクター社公式サイト,(2017年11月24日取得,https://www.erecta.co.jp/pro/solutions/cookchill/).

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