高齢者に多い悩み

高齢者の詐欺被害について

詐欺に遭わない方法とは?

はじめまして。
弁護士の堤茂豊です。
高齢者の消費者被害について皆さんに有益な情報を提供していきたいと思います。
 
今回は詐欺被害についてです。
マスコミでは高齢者の詐欺被害が取り上げられることが多いですが,詐欺の被害者は,若者から中高年,そして高齢者まで幅広い人が対象となっています。
 
特に高齢者だけが詐欺に遭っているわけではありません。
もっとも,高齢者は,家にいる時間が長く,金銭的な余裕もあることから詐欺の対象になりやすいことは事実です。
 
では,詐欺被害にあわない為に,どうすればいいのでしょうか?
それは掛かってきた電話が詐欺かもしれないと気が付けばいいのです。
詐欺だと分かっていればお金を払う人はいません。
 
では,どうすれば詐欺かもしれないと気づく事が出来るのでしょうか?
ここが難しいところです。
詐欺かもしれないと気づく方法の一つがその詐欺の手口を知ることです。
 
日々,新しい詐欺の手口が次々と生み出されていますので,いたちごっこではありますが,新聞,テレビ,国民生活センターの情報などを常にチェックし,どんな詐欺があるのか調べ,ご近所や親しい人の間で情報の共有をしましょう。
次にどのような詐欺があるのかご紹介します。

オレオレ詐欺だけではありません

①オレオレ詐欺

有名ですね。言葉は聞いたことがあると思います。
数年前からあるオレオレ詐欺ですが,特殊詐欺(オレオレ詐欺など電話等を使って送金や振り込みをさせる手口の詐欺)の中では今でも最も多い詐欺です。
子や孫を騙って「オレだけど・・・」と電話がかかり,送金を求められます。
騙された方の多くが,オレオレ詐欺のことを事前に知っていて自分は騙されないと思っていました。
 
しかし,騙されてお金を送ってしまっています。
子や孫の声ならわかると思っているかもしれませんが,泣きながら「交通事故を起こした」「会社の金を横領しているのがばれた」と電話してきてもわかりますか?
「風邪をひいている」という場合もあります。
 
よって,声だけでは判断できません。
前後して弁護士役や警察官役からも電話があります。
また,本人ではなくて会社の上司を名乗る場合もあります。
そして,「誰にも言わないでほしい。頼れるのはおばあちゃんだけ・・」と。
すぐに示談金を振り込まなければ裁判になる,会社を首になるとして急がせます。

②還付金詐欺

「市役所の福祉課の者です。医療費の還付が15万円ありますが,まだ,手続きをしていません。締め切りが本日の夕方5時までですが・・」。
あと1時間しかありません。
手続きはコンビニのATMでもできると言われてキャッシュカードと携帯を持ってATMへ。
携帯電話の指示通りに番号を入力していると,いつの間にか15万円の還付が15万円の振り込み手続きをしています。
 
冷静な時なら振り込みであることは判るのですが,時間がないとせかされて次々に番号を言われるので焦ってしまい,詐欺に気づきません。
また,還付の方法は「厚生労働省 医療費○○課」に聞いてくださいと東京の電話番号を言われることもあります。
それも,詐欺グループの一員です。

③架空請求

携帯電話に着信があり,架けてみると有料サイトを使ったとして使用料を請求されます。
こちらが使っていないというと,確認のため住所と名前を言わされます。
相手は適当に電話をかけていますので,住所も名前も知らないのですが,有料サイトを使っているかの確認をしますと言って聞き出すのです。
 
そして,調べた結果,やはり有料サイトを使ったとして支払いの請求をされます。
心当たりが無くても「数年前に使った」などと言い切られ,振り込みをしなければ裁判をするなどといわれます。
 
聞き出した自宅に催告書という名前で書類を送ってくる場合もあります。

④買え買え詐欺

自宅や携帯に電話があり,「老後の生活費に不安はありませんか」としてファンド,株,社債からCO2排出権,仮想通貨,老人ホーム入居権からオリンピック関連事業への投資など様々な「絶対に儲かります」「手元資金が増えます」という商品の購入を求めてきます。
 
こちらが,「そんなに儲かるのならばあなたが買えばいいのでは」と聞くと,「私も親戚一同みんな購入していますが,限度額があります。あなたの名義で買ってくれたら,お金は後で補てんします。」といわれることもあります。
 
話しを聞いてしまうと資料だけでも送らせてくださいといわれ,住所や名前を聞かれ,販売員が自宅に来ます。
そこでも散々本当らしい嘘をつかれ,居座られ,脅されお金を支払ってしまうことになります。

⑤ワンクリック請求

無料のアダルトサイトや芸能人のサイトを見ていて,何気なく次のページや画像を見ようとクリックしていると「登録完了」や「入会完了」等の表示が出て,「年会費○○円」などと表示がされます。
 
慌てて取り消そうとして記載されている番号に電話すると,住所や名前などを聞かれ,登録取消料を求められます。
このような場合,登録は成立しておらず支払いの必要はありませんが,「拒否すれば家に請求書を送付する。」,「法的措置を取る」などといわれ,また,クリックしてしまったのは自分であるという後ろめたさから,支払いに応じさせようとするものです。
 
他にも,アダルトサイトなどでは,画像を見ていると急に「警告」「ウイルスに汚染された」として画面が動かなくなることもあります。
解決するには,記載の電話番号へ連絡を求められ,電話すると解決料の支払いを請求されます。
しかし,ウイルスに汚染されたのは嘘で電源を切って再起動すれば,画面は正常に動きます。

⑥クレジットカード送付詐欺

「あなたのクレジットカードが不正に利用されています。請求を止めますので,クレジットカードをすぐに送付してください。」
「あなたのカード番号とセキュリティーコード,暗証番号で不正使用されているか確認します。」
などといってクレジットカードを送付させ,もしくはカードの情報を聞き出し,カードを不正に利用するものです。
 
カードを送ってしまったり,番号を教えたりするとあなたに成りすまし高額な買い物をします。

予防が大事です

詐欺は騙されないことが一番大事です。
では,どうすれば騙されないのか,その方法をご紹介します。
 
まず,最初にも書きましたが,①詐欺の手口を知る,ことです。
詐欺の手口は日進月歩です。よくこんな方法を考えつくものだと感心します。しかし,手口をある程度知っていれば,詐欺かもしれないと気づくことが出来ます。
新聞,テレビで詐欺の記事はよく載っています。
 
自分に置き換えて,どう対処すれば被害にあわなかったのか考えてみるといいでしょう。
また,国民生活センターや消費者センターのホームページにも情報が載っています。
さらに,各都道府県警察のホームページに最新の情報が掲載されている場合もあります。
 
たとえば,大阪府警の「あんまちメール」というページでは,犯罪全般の最新情報がチェックできます。
そこには,実際に起こった詐欺の手口がリアルタイムに掲載されています。
登録すると,お住まいの地域に発生した犯罪の情報をメールしてくれます。

予防方法その2

次に,②すぐにお金を払わないこと,です。
詐欺の手口は,共通して時間がないと焦らせてお金を支払わせます。
詐欺グループは,犯罪者集団なので実態がありません。いったん支払ってしまうと,警察や弁護士でもお金を取り返すことはほぼ不可能です。
 
そのため,お金を支払う前に,もう一度,本当に詐欺でないかどうか確認することが必要です。
オレオレ詐欺は,子や孫が犯罪の加害者になってしまい被害者に示談金を支払う必要があるという手口がよく使われます。
 
確かに,示談金を支払うことはありますし弁護士が間に入ってお金の受け渡しをすることもあります。
急がなければ起訴されてしまう場合があることも事実です。
 
しかし,「今日の夕方までに何百万も必要」というほど緊急性のある事案はありません。
数日の余裕はあるはずです。
今日中にお金が必要などというのは詐欺の可能性が非常に高いです。
 
時間の余裕がないと言われても,もともと知っている子や孫の連絡先にこちらから連絡してみる,家族に相談する,弁護士の名前を弁護士会で調べる,捕まっているといわれた場合は勾留されている警察署を聞いて電話するなどして必ず事実を確認してください。
勾留されている警察署は知らないなどという弁護士はニセモノです。
 
また,還付金詐欺も同じです。市役所などから今日中になどとぎりぎりになって連絡があることは考えられません。
そもそも還付金があれば書類できますし,書類を出さない人に市役所はわざわざ電話をしてくれません。
電話があった場合は,一度,市役所にこちらから電話して(電話番号は104で聞いて)みましょう。
 
さらに,ワンクリック詐欺の場合などに法的措置を取る,裁判を起こすなどと言われた場合は,詐欺とみて間違いありません。
通常,数万円の支払いでいきなり裁判を起こすことは費用対効果の面からありえません。
仮に本当に裁判になれば裁判所に事情を話せば支払う必要がないとの判断がされるでしょう。
 
お金を払う前に,詐欺ではないかと疑いましょう。そして,必ず事実を自分で確認しましょう。短時間で出来ます。
お金の支払いや手続きを急がせるものは,まず詐欺と思ってください。

詐欺に遭ってしまったら

詐欺に遭ってしまったら,残念ながら一人で解決することは困難です。
また,支払ったお金はほとんど返ってきません。
ただ,稀に返金が受けられる場合があります。
 
まずは,警察に相談しましょう。
お金は返ってこなくても,次の被害者を出さないため詐欺グループを捕まえてもらうことも大事です。
また,国民生活センターや市役所等の消費生活センターに相談しましょう。具体的な対応策を教えてもらえます。
 
ある程度相手の情報が判れば,弁護士に依頼することも考えられます。弁護士は,相手方との交渉や法的措置を取ります。弁護士は,知り合いがいればその人に,いなければ,各地の弁護士会に相談して紹介してもらうのがいいでしょう。大阪の方は当職の事務所でも対応いたします。
 
詐欺は遭う前の予防が一番大切です。自分の財産を守るため,自分で備えましょう。

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この記事を書いたコラムニスト

堤 茂豊 (ツツミシゲトヨ)

弁護士

大阪弁護士会所属の弁護士です。
大阪市住吉区で事務所を開設しています。
弁護士会の消費者保護委員会で消費者被害の救済,予防の活動をしています。

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