介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

Yahoo!ニュースで一躍話題に 「カジノデイサービス」とは?②

(前編より続く)
 「従来のデイサービスには通いたくない」という男性のニーズを取り込むことを目指して企画された「カジノデイ」ですが、実際の開設までには大きな課題がありました。
それは「カジノ=ギャンブル場」であり、日本国内では公営以外のギャンブルが禁止されていることです(「パチンコはギャンブルに該当しない」などの細かい話は、ここでは省きます)。
従って、カジノデイもギャンブルにならないようにと様々な工夫がなされました。

カジノデイでは、利用者は館内通貨を増やすことを目指してゲームを楽しみます。
ここで問題になったのが、「手持ちの館内通貨を最後にどうするか」です。金品に交換してしまうとギャンブルになってしまいます。運営事業者側では、「獲得した館内通貨で、デイ内でマッサージを受けられるようにしよう」と考えましたが、それも警察から「ギャンブルに該当する恐れがある」と指摘されたことで断念を余儀なくされます。

最終的には「最も多くの館内通貨を獲得した利用者を表彰する」というルールにしました。これにより「純粋にゲームを楽しむ場であり、ギャンブルをする場ではない」という形を整えることができました。

また「カジノ=ギャンブル」というイメージは一部自治体の態度を硬化させました。
「高齢者の射幸心をあおり、ギャンブル依存症を生み出す恐れがある」「介護報酬という公的なお金をギャンブルに使わせるのはいかがなものか」などがその理由です。

実際に一部自治体は、カジノデイが開業してメディアなどで話題になったとき「当市ではカジノデイの指定申請を受け付けない」と表明したこともありました(噂ですが、この市には有力なパチンコ事業者がおり「カジノデイができたら、パチンコに来店する人が減る」と市に苦情を入れたことが理由では、と言われています)。

このように「産みの苦労」はありましたが、今ではカジノデイは介護業界の中で一定の存在感を示すようになりました。また、前編で紹介したようなゲームの認知症予防や介護予防効果への期待から、カジノデイを名乗らなくとも利用者にゲームを楽しんでもらう介護事業所も少なくありません。
そして、今はTVゲーム世代が高齢者の仲間入りを始めたことで、eスポーツなどをデイサービスや高齢者サロンなどで楽しんでもらおうというところまで話は進んでいます。

1月下旬にyahooニュースでカジノデイが紹介されたとき、そのニュースのコメント欄には「麻雀やパチンコは、今の70歳~80歳代男性なら一般的な娯楽。デイでやるなら人気が出るだろう」「単なる時間つぶしで、塗り絵などをやらされるよりはよほどいい」など、好意的な意見が多く書き込まれました。

このように消費者側からの評価は高く、今後カジノデイに限らず、ゲームを楽しむことを主眼においた介護事業所は増えていくことが考えられます。

また、カジノデイの運営事業者は「人材採用の面でもメリットがあった」と語ります。
カジノデイは「介護事業所らしさ」を徹底して消しています。このことで、介護の仕事に興味はあったり、介護業界で勤務経験はあったりしたものの「いかにも『介護職』という現場は避けたい」という人たちを取り組むことに成功したそうです。

実際に筆者が見学したカジノデイでも「介護の学校は出たが、ずっと飲食業界やアミューズメント業界で働いていた」などという人が「初めての介護現場」として勤務しているケースが見られました。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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