介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

敏腕営業社員でも四苦八苦 なぜ、介護事業所へのセールスは難しいのか?

「介護事業所へのセールスは本当に難しい」

人材サービス、食事、家電・設備機器、通信関連機器、オフィス家具、訪問医療・理美容など、
高齢者施設をターゲットに営業を行っている会社からは、こうした声がよく聞かれます。

なぜ、介護事業所へのセールスは難しいのでしょうか?それには業界ならではの事情があるようです。

業界ならではの事情とは…?

飲食や物販など多店舗展開をする他業界の企業では、
ブランドごとに店舗のコンセプトやデザインは統一されており、
使用する備品やシステムなども全店共通です。
したがって営業は各店舗ではなく本社へ、というのが鉄則です。

それに対して介護では、同じブランドの施設でも価格帯やコンセプトが違うことが珍しくありません。
ここでまず「営業は本社にかけるべきか、施設長などの現場トップにかけるべきか」という悩みが生じます。

また、介護業界では「施設長の権限」が会社によって大きく異なります。

例えば外食チェーンなどでは店長は20代の若手社員であり
「社員のステップアップの通過点」という立場として考えられているケースが少なくありません。

介護業界では、そうした法人がある一方で、
「施設長は法人内でのステップアップの最終段階に近く、入社して20年などのベテランが就く職」
という認識の法人もあります。

後者の場合は、施設長は法人の経営中枢に近く、
物品の購入に際してもある程度の決定権を有していることが想定されますが、
前者の場合はそれほど多くの権限を有していないことが考えられます。

こうした点をしっかり見極めてアプローチをしないと、
「せっかく苦労して施設長に会えたのに全くの徒労に終わった」というケースも少なくありません。
これが、介護事業へのセールスが難しい第一の理由です。

二つ目の理由として「影の意思決定権者がいる」場合が多いことです。

例えば病院では院長よりも事務長が権力を持っているという例がありますが、これと同じことです。

ある小さな社会福祉法人の話ですが、影の意思決定権者が「理事長夫人」というケースがありました。
この夫人が法人の理事であればともかく、職員ですらありません。

それにも関わらず、施設の内装や職員の採用にまで口を出しています。
これでは理事長と家族ぐるみの付き合いでもしていない限り、
夫人に接触することは難しく、新規の会社が入り込む余地はありません。

噂によると、この理事長が過去に女性職員と不適切な関係にあったことを夫人が知り激怒。
理事長が好みそうな職員が入職しないようチェックしたのが、経営に口を出し始めた理由とか…
過去が過去だけに、理事長も夫人には「出しゃばるな」とは言えないようです。

これと似たケースで「女性の営業担当者は出入り禁止」にしている介護事業会社もあります。

これではどれだけ頑張ってもセールスできません。
これは性的差別によるものではなく
「社長と営業担当者が特別な関係なのではないか」いうあらぬ噂がでるのを防ぐ目的とか。

有力企業の経営者は誤解を招かないため、
取引策との会食でも異性と二人きりになることは避けるといいますが、
そうしたリスクヘッジの一環といえます。

ベテランヘルパーが影の意思決定権者・・・

人手不足の中で「辞められたら困る」と色々と気を使って接した結果、
ホーム長や社長すらその人の意見には逆らえない存在になることが往々にしてあります。

社長が、誰でも簡単に介護記録を作成できるシステムを気に入り
「全事業所での導入がほぼ決定」となったのですが、最後の最後で白紙撤回されました。

あるベテランヘルパーの
「介護の仕事は汗水流して働くことが尊いのです。私たちは、楽になることを考えてはいけません‼」
の一言が決定打だったそうです。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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