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福祉ネイリスト、ケアビューティスト… 美や癒しを高齢者に提供する専門家が注目される理由とは?

お洒落とは無縁の日本の施設入居者

高齢者施設の利用者の7割は女性といわれています。

一般的に女性はメイクやお洒落など自分の美を磨くことに興味があります。しかし、施設に入居したとたん、それらとは無縁の生活になるケースが大半です。

まず「外出することが少なくなる」「日頃接するのは他の入居者やスタッフなど気心の知れた人ばかり」でメイクなどの必要性がなくなるという生活上の事情があります。
また、好ましいことではありませんが、本人の意思や希望は無視され、「入浴介助が楽」という施設の都合から、脱ぎ着がしやすい服の着用や短髪が求められているというケースもあります。

以前、北欧の高齢者介護の現場を視察したことがあります。
スウェーデンの高齢者住宅の女性入居者は、真っ青なカーディガンに白いロングのフレアスカート、白いピンヒールというファッション誌から抜け出たような装いでした。

フィンランドのデイサービスにはジャケットにネクタイ姿の男性がいました。
「レディとお茶を楽しむのだからお洒落をするのは当たり前だろ?」と彼は語りました。
利用者がお洒落とは全く無縁の生活を送る日本の施設との違いに驚いたものです。

回想療法・自立支援など様々な効果

しかし、そうした日本の高齢者施設も大きく変化しています。

近年、ビューティータッチセラピスト、ケアセラピスト、ビューティーケアセラピスト、福祉ネイリスト、ケアビューティストなどの肩書きで、高齢者介護などの福祉現場で活動する人が増えています。細かな活動内容は多少違いますが、いずれもメイク、アロマ、エステ、ネイル、理美容など「美」「癒し」を利用者に届けるのが目的です。その多くは一般社団法人やNPO法人が実施する専門的な研修を受けることで認定される民間資格です。

では、なぜこれらの専門家が介護の現場で必要とされているのでしょうか。

まず、単純に「利用者が喜ぶ」ことがあげられます。要介護となり、それまでの趣味などができなくなった人にとって、お洒落は新たな楽しみ、大きな喜びとなるでしょう。

また、他人にメイクやネイルをしてもらえば施術中に会話が生まれます。メイクやヘアスタイルに気を配っていたのは若い頃のことが多いでしょう。施術中に会話を通じて昔のことを思い出すなど、回想法につながります。さらに施術をする際には施術者との間に身体的接触が生じることもあります。それも様々な面で刺激となるでしょう。

さらに、メイクやネイルで美しくなれば「友人などに見てもらおう」「外出してみよう」という気持ちが生じます。それに向けてリハビリテーションなどを頑張ろうという気持ちが生じ、自立支援などにつながります。
こうしたことから、利用者にお洒落を楽しんでもらうメイク教室などのレクリエーションなどを実施する施設が増えています。

スタッフが資格取得しレクを実施

これらを担うビューティータッチセラピストやケアセラピストなどは、それまで一般向けにサービスを提供していたエステティシャンやネイリスト、理美容師が活動の範囲を広げるために、これらの資格を取得するのが一般的ですが、介護の現場で働いているスタッフが、キャリアアップなどのために資格を取得するケースもあります。

施設に資格を保有するスタッフがいれば、レクが内製化できるだけでなく、これらのレクを地域の高齢者などに向けて実施することで介護保険外収入の確保も可能となります。

新型コロナウイスル感染症が収まらない中で、人と人との接触があるレクの実施はまだまだ難しいのが現実ですが、「アフターコロナ」を見据え、スタッフの資格取得促進を検討してみてはいかがでしょうか。

ただし、介護事業者の中には、スタッフがこうした民間資格を取得して施設運営に貢献しても、それを給与などの処遇面で評価しないところも見受けられます。当人の専門性やレク担当など新たな業務が増えることに対しては、正しく評価することが求められます。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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