介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

ユニットケア定員が最大15人に 介護現場への影響は

「概ね10人以下」が原則

2021年の介護報酬改定では、短期入所系サービス・施設系サービスの個室ユニットの定員について引き上げが行われました。具体的には、これまで「概ね10人以下としなければならない」とされていたものを「原則として概ね10人以下とし、15人を超えないものとする」としました。なお、当分の間は、現行の入居定員を超えるユニットを整備する場合は、「ユニット型施設における夜間及び深夜を含めた介護職員及び看護職員の配置の実態を勘案して職員を配置するよう求めるものとする」としています。
さらに、ユニット型個室的多床室については、これまで「入居者同士の視線の遮断の確保を前提にした上で、居室を隔てる壁について、天井との間に一定の隙間が生じていても差し支えない」として、一定の対応をした上での開設が認められていました。しかし、今回の改定では、感染症の予防やプライバシー保護の観点、また個室化を進める観点から、新たに設置することは禁止となりました。

大都市圏では「多床室容認」の声も多数

ユニットケアは「少人数の家庭的な雰囲気の中で生活すること」が特に認知症の高齢者にとって効果的であるとして、多くの高齢者施設で導入されており、近年では特養の新設に際してはユニット型であることを条件とする自治体が殆どとなっています。
その一方で、運営者側にとっては運営効率面などでの問題がありました。例えば定員50人の高齢者施設を開設・運営する場合、ユニットケアでなければ、食堂などの共用部は全員共有のものを1ヵ所設ければ十分です。一方で、ユニットケアを導入した場合は5ユニットとなり、10人用の共用部分を5ヶ所設置しなければなりません。そのコスト面はもちろんのこと、施設の床面積全体に占める共用部分の割合が多くなってしまい、同じ土地で建設した場合に確保できる居室数が減ってしまうことになります。
この点が、特に特養の待機者数が多いとされている大都市圏にとっては問題となっています。その結果として、国が個室ユニット型の整備を促進する一方で、一部の自治体は、ユニット型以外・多床室の開設も認める(場合によっては、多床室の併設を新設時の条件とする)という、一種のダブルスタンダードが生じる結果になってしまっていました。
今回、1ユニットの定員が15人に引き上げられたことで、50人の高齢者施設であればこれまで5ユニットが必要であったところが4ユニットで済むようになりました。その分、前述したさまざまな問題が緩和されることが期待されます。
しかし、その一方で、日常生活を共にする人の数が増えることで、認知症の利用者が不穏になるなどの問題が発生することが考えられますし、スタッフの業務量も変化すると予想されます。介護サービスの品質を変化させずに、どのようにユニット人数の増加に対応するか、という点が事業者には求められることになります。

仕切り方がユニークだった「ユニット型個室的多床室」

さて、今回の介護報酬改定で今後の新設が禁止となった「ユニット型個室的多床室」ですが、プライバシー確保の面などで課題があった多床室を、パーテーションなどで仕切って個室風にしたものです。広い部屋を、共用部を設けつつ(これがないと「ユニット型」となりません)「全員のスペースに窓があるように」「介護・看護スタッフの目が行き届きやすいように」などと様々な観点から上手くレイアウトして仕切っている点はなかなかユニークであり、実際に見学に行くと感心させられることも多くありました。しかし、「高齢者施設は住まいである」という考え方が一般的になる中で、徐々にではありますが、その役目を終えることになります。 
ただし、この仕切り方のノウハウなどは、そのまま埋もれさせてしまうのは惜しい感じもします。病院や寮、合宿・研修所、ゲストハウスなど、個室化はされていないものの、今の風潮からプライバシーの確保が求められているような場所に応用してはいかがでしょうか。

この記事へのコメント

下記入力欄より、この記事へのご意見・ご感想をお寄せください。
皆さまから頂いたコメント・フィードバックは今後の内容充実のために活用させていただきます。
※ご返答を約束するものではございません。

この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

掲載PR一覧

  • 老人ホーム入居相談窓口