相続・終活の事前準備

広くて大きな土地の評価が変わります!!

広くて大きな土地の評価が変わります!!

現在受任作業中の相続税申告の中で、「地積が広い」という申告があります。

そのエリアの一般的な地積と比べ、その土地が広大な場合において、一定条件を満たすと大雑把に言えば約半分で相続税評価が行える規定があります。
これを「広大地評価」と言います。

昔からこの「広大地評価」という規定が設けられて運用されてきました。
ただ、以前の申告実務では、評価を行う税理士により評価額が全く異なるという大きな問題を抱えていました。

この矛盾を改正するため、簡易な計算式を用いる方針に平成16年に改正されたのですが、今度は評価額の減額幅が大きい為に、広大地になるのか?ならないのか??の判定にさらに大きな問題を発生させることとなりました。
 

平成30年1月1日以降相続開始分から変更に

極端な言い方すると、この判定には不動産鑑定についての基礎知識が必要とまで言われおり、一般の納税者や相続税実務に精通していない税理士等では、実際問題としてその判定が困難と言われています。

これらの問題を解決することに加え、土地の形状等を無視して一律に減額幅が決定されるという矛盾をただすために、平成30年1月1日以降相続開始分から、なんと驚くことに広大地評価が完全に廃止となり、「地積規模が大きな宅地の評価」へと改訂されることになりました。

この改正により、適用の判定については完全に明確化されたため判断に迷うことはなく、どの税理士に申告を依頼しても評価額に大きな差が生じる可能性は低くなりました。

一方で、同じ土地でも改正前は約▲50%減額されたものが、▲20~30%前後の減額しかできないケースが多いと言われているため、広い土地に関する相続においては大幅な増税につながると危惧されています。
 

広大地を生前贈与することで相続を回避することがブームになっていますが・・・。

このような事態を回避するため、広大地を生前贈与することで相続増税を回避する!!という期間限定の緊急対策が一部でブームとなっています。

一般的によく行われている110万円まで非課税となる贈与では土地の移転ができないため、実務上「相続時精算課税」という制度を選択して贈与を行うコトになります。

この特例を活用することで広大地を生前贈与することが可能となりますが、一方でこの特例選択後の生前贈与はすべて実質上無効となります。

「相続」の「時」に「精算」される贈与という制度なので、生前贈与がすべて無かったことにされる為です。
 

贈与の実行には詳細な検討が必要

このため、緊急駆け込み贈与を行いたいという相談が多くなっていますが、本当に贈与を実行してよいのか?
このことについては詳細な検討が必要となります。

例えば、広大地評価改正前・改正後における土地評価額の差額が5000万円とします。
その相続において適用される相続税の税率を40%と仮定しますと、相続税の対策効果額は、
5000万円×40%=2000万円となります。

一方、相続対策対象者の平均余命(今の年齢を基にして統計的に考えた余命年数)を10年と仮定しますと、相続開始前3年以内に行われた生前贈与は贈与がなかったこととされる規制から、7年間は相続時精算課税でない贈与を行うことが可能となります。

仮に毎年の贈与額を500万円と仮定します。そうしますと贈与税の基礎控除は110万円のため、それを上回る部分に贈与税が課されます。
この金額の場合において20歳以上の直系卑属が受贈者となれば、贈与税率15%を乗じて控除額10万円を引いた金額が贈与税額となるため、
( 500(贈与額) – 110(控除額)) × 15% ― 10(控除額)= 48.5 (万円)
つまり、48.5万円が贈与税負担額となります。

500万円×7年×相続税の税率(上記仮定から40%)-毎年の贈与税負担×7年にて計算された金額が相続時精算課税を適用しない場合において有利となる税務効果額なので、
500 × 7 × 40% ― 48.5 × 7=
1400(万円)-約340(万円)= 1060万円が有利となる金額となります。

登録免許税や不動産取得税の考慮も忘れずに

この数字だけを見ると、駆け込み緊急対策を行った方が有利と思いがちですが、不動産の贈与を行った場合、登録免許税(固定資産税評価額×2%)と不動産取得税(固定資産税評価額×1.5% or 2%)が必要コストとして課税されます。

相続による不動産の移転であれば、登録免許税が固定資産税評価額×0.4%で済むために、その差額を相続税の対策効果額から減じる必要があります。

このため、本当に緊急対策をおこなうべきか否か?の答えは、事後の相続税対策を見据えた上で実行の可否を決定する必要があります。

なお不動産の場合、登記を行わない贈与は無効とされていますので、注意ください。
 

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この記事を書いたコラムニスト

竺川 健治 (ジクカワケンジ)

税理士

大阪市の天満橋駅近くで税理士事務所を営んでいます。
業界的にも珍しく、相続・相続税関係に自薦他薦含めてエキスパートとして活動中。
特に、相続増税の影響からか受任件数も増加しており、多忙な日々を過ごしています。
昔とったなんとかから、ファイナンシャルプランニングもそれなりに知っています。

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