介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

Yahoo!ニュースで一躍話題に 「カジノデイサービス」とは?①

2023年1月下旬、Yahoo!ニュースのサイトに、本格的なカジノゲームを楽しめる「カジノデイサービス」(以下:カジノデイ)を詳しく紹介する記事が掲載されました。介護業界関係者の中には、この記事を自身のSNSなどでシェアする人が何人もいて、それに多くの人がコメントを寄せるなど、ちょっとした話題となりました。

今回のニュースで「カジノデイを初めて知った」人もいると思いますが、実はカジノデイの歴史自体は10年近くになり、Yahoo!ニュースで紹介された事業者だけで直営8店舗、FC加盟店が14店舗あります。加えて同様のコンセプトで他事業者が運営する店舗もあります。今回と次回は「カジノデイ」の仕組みなどについて深掘りします。

カジノデイは、利用者がポーカー、ブラックジャック、バカラ、スロットなどの本格的なカジノゲームをはじめ、麻雀、パチンコなどを楽しめるデイサービスです。

ポーカーやブラックジャックはともかく、カードなどのゲームはデイをはじめとする高齢者施設では一般的に行われていますし、麻雀卓やパチンコ台がおいてある介護事業所も珍しくありません。これは「ルールを覚えたり、計算したりと頭を使う」「カードをめくるなどの行動が手指の訓練になる」「ゲーム中の会話や、勝った喜び、負けた悔しさなどが脳を刺激する」など、ゲームをすることで高齢者のADL維持改善効果が期待できるからです。
このように、普通のデイでもゲームが楽しめる中で、なぜ、わざわざゲームに特化したデイを開設する必要があったのでしょうか。

その理由の一つが「雰囲気」です。
例えば、私は麻雀が大好きなのですが、仮に高齢者になっても「麻雀卓が置いてあるデイ」で麻雀をしようとは思いません。
周りにカラオケをしている人がいるような場所では集中できませんし、気分も乗りません。麻雀なら雀荘など「そのために設けられた場」で行うことが「楽しむ」上では重要な要素といえます。

一方、カジノデイは、介護保険法上の通所介護の指定を受けていますが、介護事業所らしさを極力排しています。例えばスタッフのユニフォームも、ポロシャツやエプロンではなく「カジノスタッフ」を意識したお洒落でシックなもの(もちろん、介護をする上で必要な機能性は備えたものです)ですし、送迎車もハイヤーを思わせる黒塗りです。
またバカラ用テーブルやチップ類も、本場のカジノで使われている「本物」を導入しています。

デイは「男性の利用者が少ない」ことが課題になっていました。
その理由として「男性が『通いたい』と思わせるような要素が少ない」ことがあります。
あまり「男性は…」「女性は…」と断定して論じるのは避けるべきなのですが、現在の高齢者は「男は男らしく…」と教育されて育ってきた世代ですので、一般的なデイで行われるレクリエーションは「男がするものではない」という意識もあり、敬遠しがちです。

それに対し、カジノゲームや麻雀、パチンコなどは元々男性の愛好者が多いですし、介護が必要な状態になって、雀荘やパチンコに通うのが難しくなった人にとって、街中の雀荘などと遜色ない雰囲気の施設があれば、通いたくなるのは自然なことです。

こうした男性を中心にした「一般的なデイには行きたくない」という高齢者のニーズを掴んだのがカジノデイといえます。その点でいえば、リハビリ特化デイや料理デイ、お仕事デイなどと同様の差別化戦略と言えます。しかし、カジノデイには大きな課題がありました。それは「カジノ=ギャンブル」というイメージです。このために一部自治体が開設を認めないといった問題も生じました。
(後編に続く)

この記事へのコメント

下記入力欄より、この記事へのご意見・ご感想をお寄せください。
皆さまから頂いたコメント・フィードバックは今後の内容充実のために活用させていただきます。
※ご返答を約束するものではございません。

この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

掲載PR一覧

  • 老人ホーム入居相談窓口