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2022年の介護事業者倒産数 過去最多 その原因と対策を探る その②

(前編より続く)
 今回の東京商工リサーチのデータから読み解ける「倒産を防ぐための手立て」は何でしょうか。そのひとつとして「これからの介護事業者にはある態度の事業規模が求められる」という分析ができそうです。

 元々介護業界では中小・零細企業(以下:小規模事業者)が占める割合が高いという特徴があります。また、地域ごとのマーケット差が大きいため全国で画一的なサービスの展開が難しいなど、小規模事業者でもビジネスをしやすい環境が整っているといえます。しかし、倒産した143事業者を従業員数別に見てみると、10人未満という極小規模な事業者が81.8%と圧倒的多数を占めています。このことからも、こと倒産リスクとなると、規模の小さい事業者ほど高いのが現実と言えます。

 前回のコラムでも触れましたが、介護サービスの中でも居住系・通所系は利用者の定員があり、一事業所で売り上げられる金額には限界があります。従って、売り上げ・利益を継続して伸ばすには、事業所数を増やし続けていく必要があります。しかし、そう次々と事業所を新設できるだけの力のある事業者ばかりではありません。 

 そこで、多くの事業者の場合は、コスト削減による利益の確保を目指すことが重要になります。
ところが、小規模事業者の場合は高コスト体質であるばかりでなく、コスト削減に限界があるケースが少なくありません。

例えば、事業所の備品や食材なども一度に大量発注すれば単価引き下げ交渉をすることも可能です。メーカーに依頼して自分たちにあった仕様の製品を開発してもらうことも不可能ではありません。しかし、発注量が少なければそれらも不可能です。  

 また、ICTの活用やなどで1人当たりの業務を1%削減できたとしましょう。従業員が100人以上いる企業ならば、計算上はこれまでよりも1人少ない人数で業務を回すことができます(人員配置基準などはとりあえず無視します)。
それに対し、元々少ない人数で運営している小規模事業所では、数%程度業務の効率化では、従業員数を減らすまでの効果は期待できず、人件費の削減にはつながらないのが現実ではないでしょうか。

 こうしたことから、小規模事業者では昨今の物価高などを事業効率化などで吸収できるだけの余力がなく、経営的に行き詰る可能性が高くなると言えます。東京商工リサーチも今回の発表の中で「自動化や効率化によるコスト削減や人材獲得が優位な大手と、難しい小規模事業者の格差が拡大すると、2023年の介護事業者の倒産は増勢がさらに強まる可能性が高い」とコメントしています。

 このように厳しい経営状況が続くと予想される中で、今後小規模事業者は何をすればいいのでしょうか。事業規模を拡大するには、他事業者との合併という手法もありますが、「後継者がいない」「病気・体力の衰え」などの理由もない限り、自分が立上げ、育ててきた会社を手放すことを是としない経営者が殆どなのではないでしょうか。

そこで、考えられる方法としては「採用」「教育研修」「備品購入」「食事提供」「レクリエーション」など、他事業所と共同で取り組める部分については協力するなどして、大手事業者の劣らない力を持つことがあげられます。例えば、複数事業者で学生向けの就職イベントを合同開催したり、外部講師を招いた研修を合同で実施したりすれば、一事業者で行うよりも少ない費用で可能になります。新型コロナウイルス感染症が広がる前には、そうしたケースがあちこちで見られました。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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