食材費など各種物価の値上がりが原因か

大手民間信用調査機関の東京商工リサーチの発表によると、2022年1月~9月の「老人福祉・介護事業(以下:介護事業者)」の倒産件数は100件と前年同期比のほぼ2倍となりました。2000年以降で介護事業者の倒産件数が最も多かったのは2020年の118件でしたが、東京商工リサーチでは「現在の状況が続くと、年間最多倒産件数の更新も現実味を帯びてくる」とコメントしています。
 介護事業者の倒産数は、2015年以降は年に80件前後で推移していましたが21年は51件と大きく減少しています。この理由としては、「同年の介護報酬改定がプラスになったこと」「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、融資や補助などの各種経済支援が行われたこと」などが理由と考えられます。それが今年は一転して増加に転じた背景には、そうした経済支援の効果が薄れてきたことに加え、各種物価や水光熱費、人件費の上昇が大きく影響していると思われます。

業種別では「通所・小多機」が最多

 業種別では「通所系・小規模多機能」が最も多くなっています。この理由としては「訪問系サービスに比べて、食材費・水光熱費・日用品など事業者側の支出が多く、それらの値上がりが経営に影響を与えている」という点があげられます。「そうした事情は高齢者住宅でも同じなのではないか」という声もあるかと思いますが、その点については「新型コロナウイルス感染症の影響」が大きく左右しているといえます。
 コロナ感染が国内で始まった当初、外出を控える動きが高齢者を中心に広がりました。その影響でデイサービスの利用者数は大きく落ち込みました。現在はかなり回復してきていますが、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の中には、建物内にウイルスが持ち込まれることを懸念して、今でも入居者が外部のデイサービスに通うことを禁止・制限しているところもまだまだ少なくありません。結果として、コロナ前の状況にまでは利用者数は回復していないのが現実です。
 それに対し、高齢者住宅は、コロナ禍でもそれまでの利用者が退居することはありませんでした(死亡による退居は当然ありますが)。逆に「学校や仕事に行く家族がいる自宅で生活するよりは感染リスクは低く、万一の際の医療へのアクセスも容易だろう」との理由から新たに入居をする人もいます。結果として、デイサービスに比べ利用者の落ち込みなども少なく、売り上げ面での影響はそれほど大きくはありませんでした。

「下げられるコスト」の見極めを

 今後も、原油高や円安などによる各種物価の上昇傾向が続くことが予想されます。人材不足が深刻な状態が続く中で人件費・採用コストも同じような状況が続くと思われます。さらに、コロナ対策で厳しくなった国の財政を立て直さなければいけないという事情を考えると、2024年4月の介護報酬改定はプラス改定などの大きな期待はできないというのが正直なところです。
 このように、介護事業者にとってはしばらくの間厳しい経営環境に置かれることが考えられます。こうした中で求められるのは「いかに運営コストを削減していくか」です。
しかし、ことは簡単ではありません。コストの削減がサービス品質の低下につながってしまうと途端に入居率や稼働率に影響を及ぼす可能性があるからです。ある高齢者施設では、食材の値上がりに対応しようと、仕入れる食材の種類を減らしました。その結果、食事メニューの変化が乏しくなり入居者からのクレームが多発してしまいました。
こうした結果を防ぐためには「下げられるコスト・下げられないコスト」をしっかりと見極めて、サービス品質や利用者の安全性などが低下しない様に配慮していく必要があるでしょう。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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