老人ホーム選びの知識

下町エリアに多い「入居一時金ゼロ物件」 入居の注意点

高齢者住宅検索サイト「みんなの介護」(運営:クーリエ)は、
8月4日掲載物件の中で「入居一時金なし」のプランを設定している高齢者住宅が多い大阪市内の区のランキングを発表しました。
最も多かったのは東住吉区で24件、2位は東淀川区で19件、
3位は西成区・平野区でともに18件、5位は生野区の17件でした。

一方、最も少なかったのは港区のゼロ、
次いで北区・中央区の1件ずつ、福島区・浪速区の3件ずつとなっています。

もちろん、それぞれの区の高齢者住宅の供給総数自体の違いなども考慮する必要がありますが、
24区の中で「入居一時金なし」のプランがある高齢者住宅が10件以上あるのは6区にとどまっており、
大阪市東部・南部など一部エリアに集中している実態が伺えます。

入居一時金ゼロは月額費用が高額

入居一時金制度は、かつては多くの高齢者住宅で導入されていましたが、
「入居時にまとまったお金が必要なのは負担が大きい」という消費者側の声に加え、
一部の自治体が「入居一時金の償却制度、特に初期償却制度は不透明で好ましくない」という見解を示していることもあり、最近では入居一時金なしのプランを選択できる高齢者住宅も増えています。

例えば5年間(60ヵ月)入居した場合の総費用が1800万円の高齢者住宅の場合、
①入居一時金900万円・月15万円のプランと、
②入居一時金なし・月30万円のプランが選択できるようになっています。

このように、「入居一時金なし」の入居プランの場合、目先の支出は減りますが月々の費用が高額になります。入居一時金なしのプランを導入する高齢者住宅が大阪市中心部にほとんどないのは
「元々の家賃が高いエリアのため、入居一時金をなしにしたら、
毎月の費用が50万円以上など高額になりすぎてしまう」という現実があるようです。

長期間の入居は経済的リスクにも

入居金が数千万円などという高齢者住宅に入居する人は、一般的には「資産家」と呼ばれます。
しかし、現役時代の事業や所得、資産運用など財を成した人が多く、
第一線を退いた今は、定期収入は年金のみという人が大半です。

毎月50万円などの高額の費用を支払うと、預貯金を取り崩す形になるため、入居期間が長くなると資産が尽きてしまう可能性があります。いわゆる「長生きリスク」と呼ばれるものです。

実際、高齢者住宅に入居した時点では、
本人や家族も「年齢や身体状況から考えても、あと3年程度だろう」と考えていたものが、
入居後に適度な運動をしたり、栄養バランスに優れた食事を摂ったりした結果、身体状況が改善し、
10年、15年と元気で過ごすことがあるなど「長生きリスク」は誰にでも起こり得るものです。

また、入居者本人に十分な資産がない場合、
子どもなどが費用を負担して高齢者住宅に入居することもあります。
この場合「5年ぐらいなら自分たちで負担できるだろう」と考えていた入居期間が10年、15年と長くなるに伴い、子ども自身が高齢化するなどして負担能力が損なわれてしまうケースもあります。
これも一種の「長生きリスク」といえます。
 
こうした観点から、十分な資産があっても毎月の支払額が年金の範囲内で収まるように、敢えて入居一時金制度を選択する高齢者もいます。
「入居一時金なし」制度の導入は、
①高齢者住宅への入居のハードルを下げる、
②入居者に多様な選択肢を与える、という点では効果的ですし、好ましいことです。

しかし、中には安易に「入居一時金なし=安い」というイメージに結びつけている高齢者住宅も見受けらます。こうした表記は消費者を誤認させる可能性もありますので、注意が必要です。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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