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施設に入居していても低栄養が問題に 多職種連携等による栄養状態改善を報酬で評価

「飽食の時代」と言われるようになって久しい現代でも「高齢者の低栄養」が問題視されています。

食べ物は世の中にふんだんに溢れていますが、独居高齢者や高齢者のみの世帯の場合には、「買い物に行ったり、料理を作ったりするのが体力的に大変」などの理由から、ついつい食事を簡単に済ませてしまっていることが原因と言われています。

一方で、特養や有料老人ホームなどでは、「管理栄養士が監修した栄養バランスの取れた食事を毎日提供」をアピール材料にしていることが多く、入居者の栄養状態には問題がないかと思われがちですが、実際には低栄養状態の高齢者も少なくないと言われています。その理由としては「提供された食事を十分に食べない」という入居者本人の問題だけでなく、「経営環境が厳しさを増す中で、食事の質を下げて運営コストを圧縮せざるを得ない」という施設側の事情もあるようです。

 こうした状況の中で、2021年の介護報酬改定では「栄養」がキーワードの一つとなりました。具体的には以下のような改定が行われています。

〈施設系サービス〉

○栄養マネジメント加算と低栄養リスク改善加算を廃止。
○栄養マネジメント強化加算を新設。
算定要件は、
①管理栄養士を常勤換算方式で入所者の数を50で除して得た数以上を配置
②低栄養状態のリスクが高い入居者に対して、医師・管理栄養士・看護師等が共同して作成した栄養ケア計画に従い、食事の観察を週3回以上行い、入所者ごとの栄養状態・嗜好等を踏まえた食事の調整等を実施
③CHASEを活用して入所者ごとの栄養状態等の情報を厚生労働省に提出する、などです。

なお、栄養ケア・マネジメントを実施しない場合には1日14単位の減算処置がとられますが、これについては3年間の経過措置が設けられています。

〈通所・多機能系・居住系サービス〉

○栄養スクリーニング加算を口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)と同(Ⅱ)に再編。
(1)の算定要件は、利用開始時・利用中6ヵ月ごとに、利用者の口腔の健康状態と栄養状態の確認を行い、その情報を担当の介護支援専門員に提供していること。
(Ⅱ)は、口腔の健康状態・栄養状態いずれかの確認のみ実施している場合で、なおかつ他の加算の算定の関係で(Ⅰ)を算定できない場合にのみ算定可能となっています。

〈通所系サービス・看護小規模多機能〉

○栄養アセスメント加算を新設。また、栄養改善加算の単位数を1回150から200に引き上げ、看護小規模多機能を新たに対象に加える。

栄養アセスメント加算の算定要件は、
①管理栄養士を1名以上配置※外部との連携も可能
②利用者ごとに管理栄養士、看護職員・介護職員等が共同して栄養アセスメントを実施。利用者や家族に対し結果を説明
③CHASEを活用した利用者データの提出、の3つです。

〈グループホーム〉

○管理栄養士(外部との連携も可)が日常的な栄養ケアに関わる介護職員への指導・助言を行うことを算定要件とする、栄養管理体制加算を新設。

しかし、どれだけ栄誉バランスに優れた食事を提供しても、高齢者がそれをしっかり食べないと栄養状態は改善しません。

高齢者施設の中には「食事を楽しく食べる環境づくり」という面でまだまだ工夫・改善の余地があると思われるところ少なくありません。
栄養バランスも大切ですが、本物の飲食店の様な雰囲気を演出する、高齢者の世代の変化に応じたメニューを考えるなど様々な取り組みで「飽食時代の低栄養」問題を解消していきましょう。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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