大手企業の傘下であることは介護事業でどれだけ有利なのか?

「当社は、東証一部上場の○○のグループ会社だから、安全・安心です――」。
企業の宣伝やビジネスのやり取りの場で普通に聞かれるセリフです。

介護業界でも損保ジャパン、パナソニック、ベネッセコーポレーション、学研、大和証券、綜合警備保障、セコム、住友林業、JR九州などの大手企業(※社名は一部省略)が母体になっている事業者が多数あります。
では、実際のところ、介護事業者にとって大手企業の傘下であることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
逆にデメリットはあるのでしょうか?

採用面ではメリット多い

大手外食企業の子会社だった介護事業者が、大手損害保険会社に譲渡されたことがありました。
譲渡数ヵ月後に損害保険会社に話を聞きにいきましたが「先月の新規入居希望者数・就労希望者数ともに前年同月比で1.5倍になりました」とのことで、損害保険会社の傘下になったことが大きくプラスに作用していました。
元々運営していた大手外食企業は、いわゆる「ブラック企業ではないか」としてインターネット上などで炎上することがありました。
そのイメージが払拭されたことが消費者・求職者に好印象になったようです。
また、別の大手損害保険会社傘下の介護事業者は「大手グループなので『福利厚生がしっかりしているだろうと思って応募した』という求職者が少なくありません」とコメントします。

私の知人の介護事業経営者が、大手不動産関連企業に会社を譲渡したことがありました。
その理由について「経営は非常に順調です。
しかし今後事業拡大を続ける中で、いつかは新卒学生の採用も考えなくてはいけません。
学生の親に対するアピール材料として、一般消費者によく知られた企業の名前が絶対に必要でした」と語ります。

このように、採用面においては、大手企業のブランド力が非常に有効的と言えます。

介護事業なのに死がタブー

では、逆に大手企業の傘下であることがマイナスに作用した面はあるのでしょうか。

ベンチャー色の強い介護事業者に勤めていた人が、ヘッドハンティングで重厚長大産業企業の子会社の介護事業者に転職しました。
新職場の印象について「物事をひとつ決めるのに何人もの役職者の承認印が必要で、とにかく時間がかかる」「介護はそれぞれ身体状況や認知能力の違う『人』を相手にしているのだから、臨機応変に対応しなくてはいけないこともある。
時には一刻を争う場合もある。
必要なのは現場にある程度の権限を与え、その場で判断させる意識。
こんな意思決定プロセスでは手遅れになるケースが多発する」と批判していました。
もちろん、重厚長大産業の全てがこうした体質ではないかと思いますが、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

また「大手企業の介護に関する理解不足」がマイナスに作用することもあります。

ある上場企業を親会社に持つ介護事業者が運営する高齢者住宅は、親会社の建物の質に関するこだわりもあり、入居費用が周辺相場よりも高く、利用者獲得に大変苦戦していました。
そこに「サ高住の一部を借り上げてホスピスを運営したい」という企業が現れました。
空室部分を借り上げてくれますので毎月の収入は増えますし、入居者が終末期を迎えた場合でも良質なケアが提供できます。
ホスピスを運営する会社も上場企業のグループであり、取引先として何の問題もありません。
介護事業者の役員はこの話に非常に乗り気でした。
しかし、最終的には親会社の反対で流れてしまいました。
理由は「○○(親会社)として、死に係わるようなビジネスに関与するのは好ましくない」だそうです。

介護事業をしていれば、利用者の死はごく当たり前の日常です。
「いかに最期まで寄り添うか」が事業にとって必須の取り組みになっている中で、「死に係わるのは好ましくない」とは、介護を全く理解していない発言としか思えません。
大手企業の中には、「本業の商材・サービスの販促につながるから」との理由で、ひどい場合には「世間体がいいから」と介護事業の本質を全く理解しないで参入するケースもあります。
こうした親会社の場合、知名度などのメリットよりも、デメリットの方が多いと言えるのではないでしょうか。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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