介護以外について

第2回:河合雅司『未来の年表』より「2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える」について

こんにちは。
前回に引き続き、今回も『未来の年表』についての記事を掲載致します。

本項目の内容:地方での「サービス施設」の減少について

本項目では、日本の各地域で生産年齢人口の減少と共に生産力が落ち、「サービス施設」が存続できないということを指摘しています。この項目で用いている「サービス施設」という言葉は、商業施設に加えて医療施設も含む言葉で、生活に不可欠なサービスを提供する施設全般を指す言葉です。(国土交通省 2014a)

河合先生は「国土のグランドデザイン2050」(国土交通省 2014b)および「地域の経済2016」(内閣府 2016)を参考にして、三大都市圏以外の場所で多くの「サービス施設」が存続できない状況が訪れると説明をします。

そして、「サービス施設」が家の周りにない状況は暮らしを送ることが出来ないことに繋がると述べ、「国土の均衡ある発展」という目標を変えて、変化に耐えることが出来る社会に作り替える必要があると主張します。

人口に依拠した「地方消滅論」の弱点

地方活性化の活動をされている木下斉さんと経済学者の飯田泰之さんは対談の中で、まちの稼ぐ力自体が落ちていると主張をしています。(飯田・木下 2015)

両者の考えに従いますと、地方の稼ぐ力が落ちてしまっているから、人を養うための所得を確保できず、地方での人口減少が起きているということになります。極めて難しいことだとは思うのですが、顧客がその地方に限られないような商売を行うことが出来れば、「地域の人口が少ないから商売が成りたたない」という状況を避けつつ、雇用がないから都会に人口が流入すること自体も避ける状況に進むことができるのだろうと思います。

木下さんはまた、地方自治体の破綻は人口の減少よりも財政の破綻こそが真の要因だと考えます。人口減少よりも財政破綻の方が早く訪れると主張し、本当に人口問題で行うべきなのは大都市部での出生率の減少に対処することだと述べます。(木下 2016: 150-158)

不動産関連の話

前述の木下さんはアメリカで「タウンマネジメントはアセットマネジメントだ」と教えられたそうです。都市とは不動産の集合体であり、不動産の価値を上げることと都市の価値を上げることは同じであるという考えだそうです。地方活性化の進展は、サービス施設の持ち主が「店や街を繁盛させたい」という思いを強く持つことも要因の一つになっていると言えるのかもしれません。

木下さんの活動がより一層広まっていくのであれば、不動産の運用能力や不動産運用のマインドこそが地方活性化で必要だという認識が当たり前のものになっていくのだろうと思います。
 

参考文献など

飯田泰之・木下斉,2015,『まちおこしがビジネスだって忘れてない!?』,synodos,(2017年11月20日取得,https://synodos.jp/society/15346/2).
木下斉,2016,『地方創生大全』東洋経済新報社.
河合雅司,2016,『未来の年表』講談社.
国土交通省,2014a,「都市圏参考資料」,国土交通省ホームページ,(2017年11月8日取得,http://www.mlit.go.jp/common/001042019.pdf).
―――――,2014b,「国土のグランドデザイン2050 ~対流促進型国土の形成~」,国土交通省ホームページ,(2017年11月8日取得,http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000043.html).
内閣府,2016,「地域の経済2016」,内閣府ホームページ,(2017年11月8日,http://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr16/cr16.html).

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この記事を書いたコラムニスト

細田隆史 (ほそだたかし)

ベイシス社員

ほんの少しだけ人より長く大学にいました。定期的に更新するよう努めて参ります。

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