高齢者の病気・疾患

シニアのためのメディカルコラム:高血圧シリーズ3「血圧を下げるための色々な薬」

高血圧シリーズ3

「医師×福祉×経営」で感じたことを発信します、レギュラーコラムニストの柏木です。
高血圧シリーズの第3回目は、高血圧の薬についてです。
実はたくさんの種類の高血圧の薬があります。
その中で、読者の皆様が目にする機会の多そうな薬剤を中心に、注意点と合わせて解説していきたいと思います。

高血圧の薬を「降圧薬」と呼びます

高血圧の薬のことを、医療者は降圧薬(こうあつやく)と呼びます。
血圧を下げる薬というのを、専門用語で表現したものです。このコラムでも毎回、高血圧の薬というと、野暮ったい感じがするので、降圧薬と呼ばせてください。


降圧薬もいくつも種類があります。これは、同じような効果の成分をまとめた、薬の特徴の種類のことです。
例えば、尿からナトリウムを体外に排出し、血圧を下げる作用を持つ薬は利尿薬と呼びます。
こういった薬の作用による分類に基づき、“利尿薬”、“ACE阻害薬”、“ベータ遮断薬”の3種類について簡単に解説していきます。

古典的な降圧薬:利尿剤

利尿剤というのは、尿の量を増やす効果がある薬です。
よくコーヒーを飲んだら、用を足したくなりませんか?
そんな時、「コーヒーには利尿作用がある」とか言いませんか?
その利尿作用を持つ薬剤です。


利尿剤を使用すると、尿が増えます。
体内から水分が普段より多く尿として捨てられます。
その際、多くのナトリウムが尿とともに排泄されます。
 
塩分を控えましょうとよく言いますが、このナトリウムを多く摂取すると体に水分が貯留して血圧が上昇します。
なので、このナトリウムと水を尿から排泄するのが利尿剤のやっていることになります。
 
利尿剤の注意点としては、食欲がなかったり何らかの原因で下痢をしている時なども尿が出てしまうので脱水を起こしやすいです。
なので、体調や他の病気の状況によっては飲み続けるのではなく、一旦中止するなどの調節をかかりつけの先生と相談する必要があります。

降圧薬2 ACE阻害薬

ACEと書いて、エースとか、エーシーイーと読んだりします。
ACEというのは、体の中の酵素の一つで、体の中の水分の量や血管収縮の度合いなどを調整しています。
どちらかというと、血圧を高い方に維持することが役割の酵素です。
高血圧の状態が続くと、このACEが過剰に作用していることが知られています。
この状態が続くと、血圧が高いまま下がりにくくなってしまうので、このACEを阻害することで血圧を下げるというのがこの薬のやっていることです。
利尿剤に比べると新しい薬です。


ACE阻害薬の注意点について述べます。
先ほど解説したACEという酵素は、血管や心臓以外にも体の様々な部位に作用をしています。
その中で、腎臓に対する作用も重要で、ACEの作用によりカリウムといったミネラルを適度な量で体に保持する調整が機能しています。
そのため、ACE阻害薬の副作用としてACEの作用を邪魔するわけなのでカリウムが体に貯留していきます。
これは高カルシウム血症という状態で、不整脈などの原因となります。
そのため、時々血液検査などでチェックしたり、腎臓が悪い患者さんには使用を控えるといった注意が必要です。

ベータ遮断薬

これも難しい名前ですね。
ベータというのは、交感神経の一部分を意味しています。
もう一つアルファというのがあるんですが、このアルファやベータというスイッチが入ると、血圧が上がったり心拍数が増えたりします。
そもそも交感神経というのは動物が獲物を狩るときや、天敵に襲われて素早く身逃げる時などに活発になる神経です。
なので、当然血圧が上がるんですね。
 
ベータ遮断薬はこのベータの機能を減らすことで、血圧を下げる効果があります。
交感神経が常に高まった状態は、例えるなら寝ている間も心臓や血管は走っている状態と同じなため、負担がかかってしまうんですね。
なので、心筋梗塞などの病気をして弱った心臓の方などは特に、このベータ遮断薬と言われる降圧薬が重要になります。
ベータ遮断薬の注意点は、心臓や血管の動きをあえて抑えるので、調整が難しい点でしょうか。
皆さんの体の状況に合わせて、主治医の先生が微調整をしますので、処方された量と飲み方を守っていただく必要があります。

まとめ

高血圧シリーズの第3回目は、高血圧の治療薬について扱いました。
ちょっと医学的な内容が多く、難しく感じられたかもしれません。
ただ、ご自身の飲んでいる薬について理解することは、非常に大切なので、少しでも理解の手助けになれば幸いです。
次回は高血圧の治療薬の注意点について、もう少し詳しくお話ししていきます。
 

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