介護で会社をやめないために

職場の仲間が親の介護で休みたいと言ってきたら

まずは備えを

日本の高齢化の進展に伴い、企業社員の高齢化も進んでいます。
社員の高齢化が進むということは、その親の介護リスクも高まるばかりです。
 
皆さんの周りの方が「介護で休みたい」と言ってきたら、皆さんはどんなアドバイスをすればよいでしょうか?
 
もし自身の同僚が介護のために仕事を休みたいと言ってきたらどうすべきなのかを考えてみました。
現在、「介護離職(介護のために仕事を辞めること)」に踏み切る人は年間10万人(総務省 2015: 72)。
特に働き盛りの40~60歳代の人の場合が多いのではないでしょうか。
いつあなた自身または同僚や上司が、介護を理由に職場を去ることになってもおかしくない時代だと言えます。
 
介護は突然にやってきます。
脳梗塞や心筋梗塞による麻痺の発生。
骨折により車椅子状態になる。
昨日まで元気な方が、翌日には介護を必要とする状態になってしまう。
これは十分にありえますし、準備が必要ですね。
 
また、年齢の順に訪れるわけではありません。
例えば自分より若い部下のほうが、先に親の介護が必要になることだって考えられますよね。
 
では、もし「介護のために休職したい」と職場の仲間から切り出されたらどうしますか?
大介護時代に向けて、職場のマネージャーが知っておくべきこととは、どんなことでしょうか?

「安心して仕事を休める」制度を理解して伝える

最初は有給を使って「隠れ介護」をしているものの、そのうち両立が難しくなって離職する、というのがよくある介護離職のパターン。
会社に介護を隠す理由は「出世に響く」「適当な相談相手がいない」の大きく2つにわけられるようです。
これは女性の育児の問題と同じですよね。
 
初めて相談してきたタイミングが、同僚の介護離職を防ぐ最大のチャンス。
利用できるいくつかの制度について理解しておき、説明できるようにしておきましょう。
 
まずは、介護休業、介護休暇制度の知識。
・介護休業(通算93日までの休業を取得可能)
・短時間勤務制度、時間外労働・法定時間外労働の制限
・介護休暇(年5日までの休暇が取得可能)

 
法律上は「介護休業制度等を利用した社員に対して解雇や不利益な扱いをしてはいけない」と定められています。
ですが、実際に制度を利用する本人は内心不安なはず。
同僚として、あるいは上司として、「社内での立場が悪くなることはない。我々みんなかフォローするから」と伝えて安心させてあげましょう。
 
慣れない介護生活は心身に負担をかけ、うつ病を発症する方も少なくありません。
ましてや休職中の身であれば、環境が激変したストレスや職場復帰への焦りもあるでしょう。
休業中も時折連絡をしてあげて、職場の様子を伝えることにより、疎外感を抱かないようにしてあげたいものです。

また、心を許しあえている同僚なら、プライベートのことを聞いてあげて、溜まっている不安、負担を和らげてあげるのも良いでしょう。
介護のことについては地域包括支援センターなどに相談窓口があることや、経済的なことであれば社会福祉協議会に相談できることをそれとなく教えてあげてもいいですね。
 
また、平均して月3~5万円程度となる介護費用も休職中には痛い出費です。
賃金の日額40%が補償される介護休業給付制度の申請をすすめましょう。

安心して介護ができる職場づくりを

もしも介護がスタートした時に、「安心して休みがとれる」「安心して介護にうちこめる」「安心して職場復帰ができる」、こんな職場環境を用意してあげることが、これからの職場に求められる役割なのかもしれません。
 
介護はだれもがどこかで経験するかもしれないもの。どんな法律や制度があるのか、どんなサポートができるのかを理解しておき、何かあった時は、みんなでフォローしあう環境づくりが必要ですね。 

参照元

総務省,2015,「平成24年就業基本構造基本調査」,総務省公式サイト,(平成29年12月4日取得,www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/pdf/kgaiyou.pdf).

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この記事を書いたコラムニスト

佐久間信二 (さくましんじ)

介護事業研究所所長

昭和63年関西学院大学卒業
某大手企業の介護事業子会社の設立・運営に携わり、経営者として売上高20億円企業にまで成長させる
現在、個人で介護事業研究所を設立。個人の皆様に介護事業所の運営・経営に関し情報発信を実施。

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