相続・終活の事前準備

任意後見契約の【実例】について

難病を患う方との任意後見契約

シニア総合サポートセンター(通称3S会)の谷口です。
今回は私たち3S会と任意後見契約を締結した方の事例をご紹介したいと思います。
そもそも「任意後見」とは何か?のお話から入るべきですが、制度については
他のコラムニストの方々もたくさん書いておられますので、詳しくは割愛させていただきます。

簡単に言ってしまうと、ご自身の後見人(本人に代わって財産を管理したり、希望する生活を送るための環境を整えたりする者)を前もって選んでおける制度が「任意後見」です。



先ずは対象者の背景から。

対象者:Mさん(60代・男性)
ご家族:疎遠な姉1名
お身体の状態:パーキンソン病(※軽度でまだ周囲の支援が必要な状況ではない)
お住まい:マンションに一人暮らし

パーキンソン病は、難病指定されている疾患の中では長期間の対策が必要な病です。
脳への影響で徐々に身体が自分の意思通りに動かなくなり、ゆっくりと身体機能が奪われていきます。
進行すると、最終的には目の筋力程度しか残らなくなる可能性があるという恐ろしい病です。
(この方は手の震えから症状が出ており、その場合遅行性である可能性が高いと考えられています。)

なお、この病は比較的男性の方が罹患される傾向があるのですが、中でも過去にそれなりの地位でご活躍されていた方が多いようです。
緊張感の高い状況が影響するのかもしれません。

3S会が任意後見人をするという事

この病気の特徴は、“この病気そのものにより判断能力が落ちるわけではない”というところです。
しかし進行すると、身体能力低下に伴い脳への刺激が低下するため、将来副次的に判断能力の低下を招き易いと言われています。
(最近では認知症を伴うケースもあると言われています。)

そのような病気の性質を踏まえ、私としては今後必要な対策は次の3点であろうと考えました。
①将来の身体的な問題への対策
②その先にある判断能力低下への対策
③まだ60代という年齢も考えて長期間に渡る継続的サポートへの対策


①への対策は直接的には医療・介護の専門家にお任せ致します(私達がご本人からのご依頼の上、ご紹介する場合もあります)
さらに②③を解決する方法として、私たち3S会との任意後見契約を提案し、ご了解を得ることができました。
法人が行う任意後見契約には個人が行う場合と比べて多くのメリットがあります。

個人で後見人を受任すると、後見人に不測の事態が生じた場合に被後見人の方の支援が止まってしまう状況も生まれかねません。
法人で受任していればその担当者の代役を立てるのは比較的容易ですし、ケースによっては法人内で複数人のチームを組むことも可能です。
このように法人が後見人になると、継続的かつ広範囲なサポートを受けることができます。
さらに、私たち3S会には社会福祉士や介護福祉士等の福祉の専門家が在籍しており、実際に難病患者のお世話を経験した者もいます。

ご契約前には数回にわたり、生活歴・財産・ご病気・葬祭関連等、個人的な話をたくさん聞かせていただき、その上で社内で様々な専門家と協議致しました。
その結果、最終的にこの方には「移行型」任意後見契約を提案させていただきました。

自身が後見人を選ぶ時には・・・

一般的に任意後見は3類型(即効型・将来型・移行型)に分類されています。

・即効型・・・ご契約後すぐに契約を発効させます。
・将来型・・・将来判断能力が不十分になった段階で契約を発効させます。それまでは財産管理等についての権限も義務もありません。
・移行型・・・財産管理等の委任契約と任意後見契約の両方を締結します。通常委任契約を先に発効させ、判断能力が不十分になった段階でその委任契約を終了させ、任意後見契約を発効させます(委任契約から任意後見契約へ移行します)



この方は、今後、ご病気による身体機能低下が予想され、判断能力がありながら財産管理等を始めなければならない状況が訪れる可能性が高いことから、「移行型」任意後見が一番適切であろうと考えられました。

実際にパーキンソン病をお持ちの方と関わった経験のある社会福祉士からの勧めもありました。
『昔出来た事が出来なくなり、それを周囲になかなか相談できず、トイレに行くにも間に合わず、悔しそうに失禁されていた方の顔が忘れられない』
『その方がそのような状況を受け入れられず苦悩しているときに、今後の財産管理は私に任せる為にご契約下さいなどと言えますか?』
との言葉が印象的でした。

以上のような事情や考えのもと、ご本人に将来的な様々リスクをご説明し、移行型任意後見契約が必要と提案したところ、ご納得を得ることができ、契約を締結するに至りました。

ただ、この方はまだお元気ですので、毎日コンビニエンスストアにも出かけられたりしており、すぐに支援が必要な状況ではありませんでした。
そこで、契約締結時に、財産管理を任せていただく時期も任意に決められる形にして、委任契約が必要とされるまでは定期的に電話・面談により状況を確認する等の見守り支援を行うこととなりました.。

このように、ご自身の状況によって必要な契約も対応も違ってきます。
後見人というと、財産の管理を行う者とのイメージが強いですが、実際はそれだけではありません。

ご本人にとってどのような施設に入居するのが望ましいか?どのような医療・介護サービスを受けるのが適切か?
関係者と連絡をとって調整を図ったり、反復継続的な状況把握と契約締結等の対応を行ったりするなど、
後見人の仕事は、被後見人のまさに人生の多岐にわたって関わることになります。

被後見人が自分らしく幸せに旅立つことができるかどうかは、(ご家族による支援がない場合は特に)後見人に依るところが大きいのは間違いありません。
以上を踏まえ、任意後見人を選ぶ際には、ご自身の想いをどれだけ形にしてもらえるか?受けとめてもらえるか?を一番大事にして選んでいただきたいと思います。

(このコラムの担当者)
一般社団法人シニア総合サポートセンター 大阪支部
マネジャー 行政書士
谷口 宜邦(たにぐち よしくに)

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この記事を書いたコラムニスト

一般社団法人シニア総合サポートセンター (イッパンシャダンホウジンシニアソウゴウサポートセンター)

身元保証・死後事務委任・任意後見・遺言信託

私たちは一般社団法人シニア総合サポートセンター(略称:3S会)と申します。
シニアの皆様が現在・将来・死後の不安を解消し、尊厳ある生涯を送られるよう全力でサポートいたします。






(一般社団法人シニア総合サポートセンターの沿革)

2014年5月  
設立記念講演会(於:中央大学駿河台記念館)を開催 最高顧問に海部 俊樹氏(元内閣総理大臣)就任

2014年8月    
「あなたの「思い」と財産を伝えるための引き継ぎノート」を出版

2014年10月~  
高齢者施設等にて成年後見、相続・遺言、身元保証等に関するセミナーを開催

2014年12月  
逝去された会員の御霊を祀る供養塔を高野山に建立

2016年1月
イオンライフ株式会社と業務提携契約を締結(身元保証・遺言信託)

2016年2月〜
イオン各店舗で開催される終活フェア(セミナーと相談ブース)に参加

2017年8月・9月
東京・大阪にて弊社主催の『人生100年セミナー』を開催

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