高齢者の病気・疾患

事前の話し合いって本当に大事です

事前の話し合いって本当に大事です

「医師×福祉×経営」で感じたことを発信します、レギュラーコラムニストの柏木です。
 
年が明けて早いもので、すでに1ヶ月が経過しました。
小さい頃はいろんなものが待ち遠しく、3日後の遠足だって「まだかなぁ」って待ちわびてたのに、今では1ヶ月も気づけば過ぎる程度の長さに感じるようになってきました。
 
さて、前回に続き、コラムを書いていきます。
通常、緩和ケアというと、モルヒネといった医療用麻薬などの話から入ることが多いのですが、
せっかく定期連載という場をいただいておりますので、もう少し皆さんに身近な話題から入ろうと思います。
もちろん、そのうち医学的な内容や、皆さんの要望にお応えする形でのコラムも書きますのでご安心ください。
というわけで、しばらく、「事前の話し合い」について話していきましょう。
 
ちなみに、よく終末期という言葉が使われてきましたが、最近は「人生の最終段階」と表現されることが多いです。

人生の最終段階の話し合いはしてますか?

いきなり、ちょっと重い質問に感じられたかもしれません。
でも、私が医療現場で経験する多くの人にとって、命に関わるような病気が発覚するのは突然です。
がんのような病気を告げられ、そしてそれは根本的な治療が困難であることを医師から説明される場面を少なくとも皆さまよりも経験してきました。
多くの方が、「寝耳に水で頭が真っ白」になったとおっしゃいます。そのくらい、衝撃が大きなことなのですね。
 
ちょっと話がずれてしまいましたが、言いたかったことは、「そんなこと急に聞かれても困る!」と思った方、
こういったことはそもそも急に直面するんですよ〜〜〜ってことです。
 
さて、実際に日本人がどの程度、人生の最終段階における話し合いについて取り組んでいるか、厚生労働省がおこなった調査があります。
 
人生の最終段階における医療について、話し合ったことがある人がどのくらいいるのでしょうか?
なんと、一般国民の55.9%は全く話し合ったことがなく、詳しく話し合っているのは2.8%にすぎませんでした。
これをみて、どのように感じますか?

私のような医療者とこの話をすると、
「自分のことなんだから、しっかり話し合っておいて欲しいよね〜」
「医者だからって、あなたに何がいいか決めることはできないんだから」
と言った意見が噴出します。
 
でも、私はこの医療者側の意見には少し共感できないところがあります。
もうお気づきかもしれませんが、医師・看護師・施設介護職員においても、
そんなにしっかり話し合っているわけではない内容です。
 
いや、そりゃあ、一般国民と比較すると、詳しく話し合っている人は医師・看護師は10%前後で多いですよ。
でも、高等教育を受け、医療専門職として日々、医療現場で汗を流し、国民の皆さまに
「自分の人生の最後について、大切な人とちゃんと話し合っておいてください」という集団の実態としては、寂しく感じてしまうのは私だけでしょうか・・・。
 
ここで本質に戻りましょう。
人生の最終段階における、事前の話し合いの大切さというのは、医療者はもちろん、国民も否定する方は少ないと思います。
「自分の人生だから、自分でしっかり考えましょう。大切な人と話し合いましょう!」というのは、多くの人が正しいと思うのですが、
多くの人が実際に行動を取っていない。そしてそれは、医学知識があるとか、医療現場の経験があると言ったことでは、
具体的な行動には繋がらないということが読み取れます。
 
そうです、人は理屈では動けないのです。
 
ではどうすれば良いのでしょうか?これは万人共通の正解などはありません。
ただ、せっかく読んでいただいた皆さまに、考えるきっかけとなる情報を、
次回以降、書いていこうと思います。
 
今回もどうもありがとうございました。

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この記事を書いたコラムニスト

柏木 秀行 (カシワギ ヒデユキ)

医師・社会福祉士・経営学修士

1981年広島県呉市に生まれる。筑波大学医学専門学群を卒業後、福岡の飯塚病院に初期研修医として就職。救急、感染症、集中治療などを中心に研修を行った。地域医療を支える小規模病院に出向した際、医療経営と地域のヘルスケアシステムづくりをできる人材になりたいと感じ、グロービス経営大学院で経営学修士を取得。また、社会保障制度のあるべき姿の観点を、研修医教育に取り入れたいと感じ社会福祉士を取得し育成に取り組む。現在は飯塚病院緩和ケア科部長として部門の運営と教育を行いながら、診療所の経営コンサルトをオフタイムに兼任。緩和医療専門医、総合内科専門医、プライマリ・ケア認定医・指導医。

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