介護施設のちがい

関東と関西 高齢者住宅選びに際する考え方の違いは?

「県民性」がテーマのテレビ番組が人気を博しています。

「そこまではっきりと県民性があるのか」という点には懐疑的な見方もあるようですが、
「関東と関西」については住民の気質などに大きな違いがある点には異論は少ないと思います。

高齢者住宅選びに際しても、こうした気質の違いは大きく影響するようで、
関東から関西、関西から関東に進出した介護事業者の中には、色々と苦労するところが多いようです。

今回は関東から関西に進出した介護事業者(以下:A社)を例に
「高齢者住宅選び・入居に関する東西住民の意識の差」をみてみましょう。

「どうせなら地元の会社に…」の意識強い

 「東京の会社ですか…」。関西進出が決まり、地元の病院やケアマネジャーに挨拶にいったとき、
A社はこうした言葉を何回も言われました。

A社は本業がBtoB事業であり、一般消費者には馴染みがありません。
関東で高齢者住宅の運営実績はありましたが、まだ数は少なく、関西での知名度は殆どありませんでした。

もちろん、高齢者住宅事業を新規で始める会社は多いですから、
病院やケアマネにとって未知の介護事業者から営業をかけられるのは慣れています。

引っかかったのは東京からの進出ということ。東京へのライバル心もあり、
関西の人は「同じ買うなら、地元の会社で」という意識があります。

A社の物件はアクティブな人も対象にした高級住宅でした。

当時、関西では関西電力や神戸製鋼など地元有力・老舗企業が同じコンセプトの物件を運営するなどライバルも多くいました。
地元の高齢者が「どうせなら昔からよく知っている会社の物件に…」と考えるのは自然なことです。

A社のホームは入居者募集に苦戦しました。

「遠方への転居を好まない」という関西の気質にもA社は苦労しました。
関東、中でも首都圏の住民は、自身や親が外から引っ越してきた人も多く、居住地への「こだわり」がそれほど強くありません。
都内から千葉県など「いい物件があれば、都道府県を超えて転居」も珍しくありません。

それに対して関西では「○○市以外は嫌だ」「△△線の沿線以外は住みたくない」と住む場所に強いこだわりを見せる人が少なくありません。
いくら良質な高齢者住宅でも「あそこの場所では…」と入居に二の足を踏む人が大勢います。

「かなり遠方にも営業をかけたのですが、徒労に終わることが多かったです。関西は営業対象になるエリアが狭いと実感しました」とA社は語ります。

引っ越し慣れしておらず、断捨離が苦手

さて、こうした違いに戸惑いつつも次第に入居が決まります。

しかし、後になってから「入居は難しいかも…」と言ってくるケースが多く見られたそうです。
その理由は「引っ越し準備ができない」でした。

高級高齢者住宅とはいえ居室面積は70~100平米程度。
そこに入居となれば、相当な断捨離が必要です。

しかし、同じ場所に長く住んできた関西の人は引っ越し慣れをしておらず、
家財道具が多い上に断捨離が苦手というケースが多いのです。

「自宅に伺うと『平清盛と一緒に京都からやって来た…』みたいな骨董品がゴロゴロしていました。
確かに家財の処分、引っ越しは大変そうです」とA社は語ります。

最後にA社以外の例を一つ。

関西、特に大阪は金銭面でシビアな考えの人が多いと言われますが、
高齢者住宅選びに際してはどうなのでしょうか。

かつて低価格のサービス付き高齢者向け住宅で全国を席巻した介護事業者が関西に初進出したときに、
地元の人から「入居費用が高すぎる」と言われたそうです。

その後、同様の価格で首都圏進出をしましたが、
その際に「入居費用が安すぎて怪しい。ちゃんとした介護をしてくれるのか心配だ」と言われました。

同じ入居費用でも、関西と関東では受け止め方が全く違うようです。

この記事へのコメント

下記入力欄より、この記事へのご意見・ご感想をお寄せください。
皆さまから頂いたコメント・フィードバックは今後の内容充実のために活用させていただきます。
※ご返答を約束するものではございません。

この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

掲載PR一覧

  • 老人ホーム入居相談窓口