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採用コスト年間1000万円以上削減も 「リファーラル採用」活用のポイント

ミスマッチが少ないのがメリット

今回は「リファーラル採用」に関する話です。何だか難しい言葉ですが、
要は「現在働いている従業員からの紹介・推薦による人材採用」です。求人広告やハローワークといった従来の採用活動ではなかなか人材が確保できなくなった介護業界でも熱心に取り組む事業者が増えています。ある大手民間介護事業者では、年間100人以上をこの手法で採用しています。

リファーラル採用には、ほかの採用活動に比べて、次のようなメリットがあります。

まず、「採用コストが安くすむ」という点です。広告の掲載料や人材サービス会社への紹介料の支払いが不要になるので当然です。リファーラル採用では紹介をした従業員に謝礼金のようなものを渡すケースも少なくありませんが、それでも多くの場合、1人採用するためのコストは広告などに比べて少額で済みます。先に紹介した民間大手介護事業者では年間1000万円単位で採用コストが削減できているそうです。

次に「ミスマッチが少ない」点です。求人広告などの不特定多数の人に門戸を開く形式の採用では、どのような人が応募してくるかは運任せです。どれだけ書類選考や面接を行っても、職場に合わない人材を採用してしまうリスクは避けられません。その点、リファーラル採用は、現職の従業員が「うちの職場にマッチするだろうか」などの点を考えた上で友人などを紹介します。また紹介される側も、事前にその従業員を通じて会社の方針や雰囲気について理解できますので、入社してから「こんなはずではなかった・・・」とギャップが生じませんので、長期就業につながります。

そして、リファーラル採用が効果的に機能するには、従業員が「うちの職場は、友人に安心して勧められる」と思わなくてはなりません。リファーラル採用の導入は、結果的にコンプライアンスの重視や従業員の処遇改善など、経営の健全化を進めることにつながります。

多額の謝礼金が就労意欲の低下に

さて、このようにメリットの多いリファーラル採用ですが、デメリットも少なくありません。実際に介護業界で起こったケースを紹介します。

ある事業者の若手女性従業員は社交的な性格で、非常に多くの友人・知人がいました。そこで社長は彼女に「1人入社するごとに10万円を支給するので、友人・知人に働くように声がけをして欲しい」と持ち掛けました。彼女が熱心に声がけをした結果、毎月1~2名はコンスタントに入社しました。しかし、その一方で1年もたつと様々な問題が生じるようになりました。

まずは従業員の年齢構成です。彼女自身が若いですから、彼女の紹介で入社した人も若い人ばかりで、年齢構成のバランスが大きく崩れました。しかも入社した人の多くが介護業界は未経験だったため、彼らの教育・指導に当たるリーダークラスの業務量が一気に増え、その層から離職者が出てしまいました。

そして、彼女の紹介で入社した人たちは、もともと友人・知人関係にありました。そのため、旅行や冠婚葬祭などで同じ日に有給休暇の申請を出してくるなどのケースが増え、シフト作成の面で苦労することが増えました。

さらに、紹介をした彼女自身の本来の仕事へのモチベーションの低下です。彼女は本来の給与以外に1年間で200万円近い金額を手にました。残業や休日出勤などで手当てをもらうよりも、ずっと楽に稼ぐ方法を見つけてしまったのです。そのうち「夜勤には入りたくありません」など我儘をいうようになりました。

事業者全体として「リファーラル採用に力を入れよう」と考えても、従業員全員が自分の友人・知人を入社させられるだけの人脈や能力を持っているわけではありません。

結果的に一部の従業員の私的な交遊関係に人材確保を頼ることになるという点は、リファーラル採用のリスクとして認識しておく必要があるといえるでしょう。リファーラル採用を活用する際には、予め「紹介して欲しい人材の経験やスキルなどを明確にしておく」「『年に何人まで』など人数を決める」などルールを定め、一般採用とバランスよく併用する必要があるといえます。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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