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緊急宿泊ニーズの受入要件緩和 コロナ禍で同居家族の感染など想定

グループホームや小多機など4サービスが対象

2021年の介護報酬改定では、認知症グループホーム、短期入所療養介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護の4つのサービスについて、緊急時の宿泊ニーズに対応できるように、受け入れ日数や人数要件に関する見直しが行われました。詳細は以下の通りです。

① 認知症グループホーム
利用者の状況や家族などの事情により、介護支援専門員が必要と認めた場合などを要件とする定員を超えた短期利用の受入れ(緊急時短期利用)要件を、以下のように見直す。
〔人数〕1事業所1名まで→1ユニット1名まで
〔日数〕7日以内→原則7日以内。家族の疾病などの場合は14日以内
〔部屋〕個室→「概ね1人当たり7.43平米で、プライバシーの確保に配慮した個室的なしつらえ」が確保される場合には個室以外も認める。

② 短期入所療養介護
日数について、認知症グループホームと同様の見直しを行う。

③ 小多機・看多機
事業所の登録定員に空きがあることなどを要件とする登録者以外の短期利用(短期利用居宅介護費)について、登録者のサービス提供に支障がないことを前提に、宿泊室に空きがあれば算定可能とする。

深刻なショートステイ不足

要介護高齢者と同居する家族が、何らかの理由である程度の期間家を空けなくてはならない事態に対応する介護保険サービスには短期入所生活介護(ショートステイ)があります。しかし、あまり使い勝手がよくないのが現実です。

まず、本来の「一時的な利用」という目的から大きく逸脱し、特養の入居待機者などの長期利用者が少なくありません。これには「数日間程度の短いサイクルで利用者が入れ替わると準備などの手間がかかる。それならばいっそ長期利用者でベッドを埋めた方がいい」という運営者側の事情もあるようです。このためなかなかベッドが空かず、「数ヶ月先まで一杯」といった状況になっています。これでは家族の入院や冠婚葬祭など、急を要する事態に全く対応できません。

こうした問題を解決するために、2012年の介護報酬改定では特定施設の空きベッドをショートステイとして活用することが新たに認められ、さらに15年の介護報酬改定ではその要件が緩和されました。しかし、この仕組みを活用している特定施設は少なく、ショートステイ不足は解消されていません。

また、ケアマネジャーからショートステイへの空きベッドの照会は、ほとんどが電話です。ベッド不足の中で1日中電話をかけ続けることも多く、ほかの仕事が全くできなくなることから、ショートステイの利用を嫌がるケアマネジャーもいます。これも使い勝手の悪さに拍車をかけています。

新型コロナウイルスの感染が収束していない中では、要介護者と同居する家族が感染者・濃厚接触者となり、入院・隔離をしなくてはならないケースの増加が考えられます。今回の緊急宿泊ニーズに対する要件緩和は、それを念頭においたものと考えられ、同時に「短期宿泊は利用しにくい」といった問題解決に寄与することが期待されます。

「サイトで検索」 現状では不十分

しかし、介護業務のICT化の必要性が叫ばれる中で、ケアマネジャーからの問い合わせは電話が主体という現状は如何なものでしょうか?ショートステイ運営者は、利用者などには「ホテルと同じです」などと説明しているようですが、それならばホテル同様に様々なショートステイから日付を選んで空き状況を検索できる仕組みがあってもいいのではないでしょうか。

一部の自治体などでは、この仕組みを構築・運用しています。しかし自治体の運営だけに、民間企業運営のショートステイは対象外など、制約があるようです。また、ある県の検索システムは「十分に活用されていない」との理由で、2017年3月で運営を終了しています。このように現状では十分とはいえません。

ホテル検索サイトなどのように、民間企業が開発・運営したサイトで、自費を含む幅広いジャンルのショートステイを検索し予約できる仕組みの導入が待たれます。また、そのためには「広告費を払ってもサイトに掲載したい」と運営者が思えるような報酬であることも求められます。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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