施設入所は良いこと?悪いこと?
会社の同僚の家族の話
私の同僚が今日会社でこんな話をしていました。
「実家で母が、叔母の子供たちに対して、怒り心頭。
叔母は最近、もの忘れが多く、かつ攻撃的になっているようで、診断は出ていないですが認知症のよう。
従兄たちが、叔母を老人ホームに入れようとしていることに対し、母が怒っているそうなんだ。
叔母は従兄夫婦がみており、どんな事情かわからないんだが、従兄夫婦が叔母の老人ホーム入りを提案しているよう。自分は外野ですので、何の意見もないのですが、従兄夫妻がそういうことを言いだすのは、多分何かの事情があるのだろうと思うんだ。」
なるほど。介護をしている家族と外野の親族。
自分が入居相談を行っているときもよく聞く話です。
もう家での介護は限界です
古い資料を整理していると過去の産経新聞の切り抜き記事を見つけました。
「もう家では、介護の限界です」
あるとき、脳梗塞で通院している70代の義母を持つ女性が外来に来られました。
義母には「自分の物を盗まれる」といった妄想があり、怒ったり、暴力をふるったりし、自分の部屋に鍵をかけてしまうとのことでした。
家族は険悪な雰囲気になってしまい、女性は「自分ががんばって介護しなければ」という思いで献身的に介護されていましたが、精神的なストレスも多く、半ばうつ状態でした。
そこで、義母本人に物忘れの検査をしたところ、程度は軽いですが、アルツハイマー型認知症の兆候が出ていました。
ケアマネジャーさんに連絡し、医療スタッフや介護スタッフが集まって今後のことを相談した結果、家での介護は限界だろうと判断し、施設の入所を申し込むことになりました。
家族の中には、「もっと自分が頑張らなければならない」「施設に入れることは介護をあきらめることだ」「かわいそう」という思いを持つ方もありますが、決してそうではありません。
このような気持ちは“介護破綻”につながり、介護が限界を迎えてしまう可能性があります。
介護は1人で抱えこまないで、介護保険などの支援を受けて皆で支えていくことが大切です。
施設入所は「塞翁が馬」
限界になってから慌てて施設を探すのではなく、早めから施設入所のことも視野に入れておくことが大事ですね。
介護施設には色々な形態のものがあります。
また、ご入居者さまの状況により、目的により施設を選択していかなくてはなりません。
それらを知り、きちんと準備をしておくことで、逆に介護に余裕ができ、家で穏やかに長く過ごしていただくことができます。
入所後も家族は会いに行って一緒に話をしたり、外出や外泊をしたりして関わることができます。
入所してからも家族にできることはたくさんあります。
施設入所というのは「塞翁が馬」です。
入所することで不幸になるのではないかという不安があるかもしれませんが、入ってみるとお互いにとって幸せになるかもしれません。
認知症であっても、家族全員の理解があれば、人生の最後までその人らしい生活をおくることはできるのではないでしょうか。